朝6時50分。息子の部屋のドアを開けて、布団を引き剥がした。起きない息子の腕を引っ張り、制服に着替えさせようとした。
息子は必死に抵抗したが、私は諦めなかった。散々格闘したあとで、息子は泣きながら「もうやめてよぉ…」と弱り切った声で訴えてきた。
女性の力で、思春期で大きくなった体を動かすには限界がありました。結局、諦める日が増えていきました。
毎日ではありません。でも時々、こんな朝がありました。
もう今日は学校に行かないんだと諦めた後、色んな感情が襲い掛かってきました。勉強が遅れたり友達ができなくなる「不安」、なんで学校に行かないの!みんな行ってるのにという「怒り」、力づくで痛い思いをさせてしまったかなという「後悔」、そして、小学校の時は毎朝寝ている息子を抱きかかえて着替えさせていたのに、いつの間にかもうこんなに大きくなったんだなという「妙な寂しさ」——息子の成長を感じてウルっとしながら、心療内科で貰った薬を飲んで心を落ち着かせていました。
こうやって自分を追い詰めていた時期に、少しずつ頼るようになったのが相談できる場所の存在でした。
相談できる場所は意外とたくさんあります。
- スクールカウンセラーに相談する(無料)
- 教育支援センター(適応指導教室)に相談する
- 不登校の親の会に参加する(オンライン)
- 信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう
- SNSで同じ悩みの母親と情報交換や悩み相談
これは一例です。
これが、私がやってしまった”やってはいけないこと”の1つ目です。不登校の子を持つ親として、私はたくさんの間違いをしてきました。
この記事では、不登校の子を持つ親が絶対にやってはいけない5つのことを、私自身の失敗経験をもとにお伝えします。1つでも心当たりがあったら、今日からやめてみてください。
やってはいけないこと①:無理やり学校に行かせる
「休みグセがつくから」「1日でも行けば元に戻るかも」
そう思って、私も最初は無理やり学校に行かせようとしました。朝、布団を引き剥がし、制服に着替えさせようとする日々。
でも、結果は逆効果でした。
息子は泣きながら激しく拒絶し、そのうち完全に部屋から出てこなくなりました。無理やり連れ出そうとしたあの朝が、不登校を長期化させた決定的なきっかけだったと今では思っています。
なぜダメなのか
不登校の子は、心や体がSOSを出している状態です。その状態で無理に学校に行かせることは、骨折している足で走らせるようなもの。傷が深くなるだけです。
代わりにどうすればいいか
「学校に行かなくてもいいよ」と伝えること。これは甘やかしじゃなかった、と後から分かりました。「あなたの味方だよ」というメッセージです。子どもが安心して初めて、次のステップに進めます。
私の場合——この言葉を口に出すまでに、ずいぶんかかりました。私自身が「学校に行くのが当たり前」という思い込みから抜け出せず、母親としてそれを認めてしまっていいのかと葛藤し続けていたのです。「無理に学校に行かなくっていいから」——そう初めて言えた日の夜、少しだけ肩の力が抜けたのを覚えています。
もうひとつ、朝の声かけも大きかったです。私は毎朝「今日は学校行く?」と聞いていましたが、この問いかけ自体が息子を追い詰めていたのだと、当時は気づけませんでした。Xで同じ立場の親の声に触れてヒントをもらい、声かけを変えたことで、朝の空気が少しずつ変わっていったんです。この話は長くなるので、別の記事に詳しく書いています。
▶ 不登校の子への朝の声かけ|「学校行く?」をやめたら親子の朝が変わった話
やってはいけないこと②:原因を問い詰める
「なんで学校に行けないの?」「何かあったの?いじめ?先生?」
親としては原因を知りたいのは当然です。でも、本人にもはっきりした原因がわからないことが多いんです。
息子に何度聞いても「わからない」「別に」としか返ってきませんでした。それを「ちゃんと話しなさい!」と詰め寄った結果、息子はますます口を閉ざしてしまいました。
なぜダメなのか
不登校の原因は1つではなく、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。起立性調節障害、学校での人間関係、勉強の遅れ、自己肯定感の低下——本人にも整理できていない状態で「なぜ?」と聞かれても答えられません。私の息子もそうでした。幼い頃から自分の気持ちを言葉にするのが得意な性格ではなかったので、私がいくら聞いたところで話せないのです。心のどこかで「どうせ話しても分かってくれないでしょ」という思いもあったのかもしれません。
代わりにどうすればいいか
原因追求よりも、「今、どんな気持ち?」「何かしてほしいことある?」と、現在の気持ちに寄り添う声かけを。答えがなくても大丈夫。聞いてくれる人がいるだけで、子どもは救われます。
私の場合——「何かママにできることある?」と聞いても、最初は「別にない」としか返ってきませんでした。それでも聞き続けたことで、時間はかかりましたが息子の態度や返事が少しずつ変わってきたのです。「今はないかな」「うーん…特にない」——次第に表情も柔らかくなっていきました。数年かかりましたが。
やってはいけないこと③:他の子と比較する
「○○くんは毎日学校行ってるのに」
「周りの子はちゃんとできたのに」
「同じクラスの△△さんのお母さんに聞いたら、普通に通ってるって」
私もつい言ってしまったことがあります。悪気はなくても、子どもにとっては「お前はダメだ」と言われているのと同じです。
私の場合——比較の言葉は口にしなくなったけど、心の中で比べてしまう癖は、正直まだ完全には消えていません。
なぜダメなのか
比較は自己肯定感を破壊します。不登校の子はすでに「自分はみんなと違う」「自分はダメだ」と思っていることが多い。そこに追い打ちをかける比較は、心をさらに壊します。
代わりにどうすればいいか
「あなたはあなたのペースでいい」ということをちゃんと伝えてあげてください。周りと比べたくなる気持ちは無理矢理抑え込んで、「この子はこの子」と受け入れる練習をするのです。
偉そうなことを言っていますが私自身、受け入れるまで何年もかかりました。受け入れるしかなかった……というのが正しい表現かもしれません。
不登校×反抗期×ADHD傾向あり×勉強は一切しない。他の子と比べるような状況ではなかったのです。
人と比べないかわりに、過去の息子と比べるようになりました。昨日の自分と比べて少しでも前に進めたら、それを認めてあげてください。まずはほんのちょっとしたことでいい。例えば「最近トイレの電気消すようになったね」とか「お!今日は朝起きれたんだね」とか。前向きな言葉をかけ続けることで「自分はダメな子じゃないんだ」と思えるようになるのです。
不登校だからこそ家での明るい環境作りが大切だったと、数々の失敗を経験して学びました。
やってはいけないこと④:「勉強しろ」と毎日言う
これは私が一番やってしまった失敗です。
「学校行けないなら、せめて勉強はしなさい」
「このままじゃ高校行けないよ」
「将来どうするの?」
毎日のように勉強の話をした結果、息子は部屋に引きこもり、私とまともに会話できなくなりました。
なぜダメなのか
「勉強しろ」は親の不安を子どもにぶつけているだけです。子ども自身も勉強の遅れは気にしています。でも、心と体が追いつかない状態で勉強を強制しても、何も身につきません。
私自身がまさにそうでした。シングルマザーとして生活費を稼ぎながら、個別塾に1時間8,000円を払っていた時期があります。月4万円の塾代——正直、家計は火の車でした。それだけのお金をかけているのだから結果を出してほしい。そんな焦りが「勉強しろ」という言葉になって、毎日のように息子にぶつけていたんです。お金の不安が、子どもへのプレッシャーに変わっていたことに、当時の私は気づけていませんでした。
詳しくはこちらの記事に書きました。
→ 不登校の中学生に「勉強しろ」と言い続けた結果
代わりにどうすればいいか
勉強のことは言わず、子ども自身が「やってみよう」と思えるタイミングを待つこと。これは息子が通っていた小児科の先生も、私が通っていた心療内科の先生も、同じことを言っていました。半信半疑でしたが、不登校の子をたくさん見てきた人たちが言うのであれば試してみようと思い、何も言わないようにしました。
すると高校受験がせまってきた頃に、息子が言ったんです。「受験したいから、本屋さんでまずは簡単な参考書を買いたい」と。結果的に参考書での勉強は長くは続きませんでしたが、先生方の言っていたことは本当だったのです。
勉強を強要するのではなく、子どもの勉強スイッチに火がついた時に、無理なく始められる環境を用意しておくのが親の役割なのだと痛感しました。
塾・家庭教師・参考書……色々試しましたが、息子の性格に合っていたのは通信講座でした。机に座って鉛筆を持って本を開くことが億劫に感じていた息子でしたが、学習サービスのタブレットならベッドの上でスマホを触る感覚で始められる——これが大きかったです。さり気なくベッドの横にタブレットを置いておく。私がしたのはそれだけです。
やってはいけないこと⑤:親だけで抱え込む
「うちの子が不登校だなんて、恥ずかしくて誰にも言えない」
その気持ち、痛いほどわかります。私もそうでした。ママ友にもきょうだいにも言えず、1人で全てを抱え込んでいました。
その結果どうなったか?私自身がうつ状態になりました。
フリースクールも専門家も費用が高く(支援制度はこちら)、シングルマザーの家計では手が届かず、出口が見えない孤独に押しつぶされそうでした。
前の記事にも書きましたが、学校行事に行けば行ったで、周りはみんな夫婦連れ。ひとりでぽつんと座っている孤独は、想像以上に堪えました。息子が「来なくていい」と言った体育祭を欠席した日、友人から「応援団やっててかっこよかったよ」と聞いて、激しく後悔しました。誰にも頼れず、誰にも共感してもらえない——そんな日々が続いた結果、心が限界を迎えたんです。
なぜダメなのか
不登校の対応は長期戦です。親が抱え込むと、精神的に消耗し、子どもに余裕を持って接することができなくなります。親が倒れたら、子どもを支えられる人がいなくなります。
代わりにどうすればいいか
- スクールカウンセラーに相談する(無料)
- 教育支援センター(適応指導教室)に相談する
- 不登校の親の会に参加する(オンライン)
- 信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう
私はXで同じ立場の親とつながったことで、「自分だけじゃないんだ」と救われました。画面越しでも、説明しなくても分かり合える感覚があったんです。
最終的にたどり着いたのは、市の無料相談窓口でした。そこで言われた「お母さん、ひとりで頑張ってきたんですね」という一言に、目頭が熱くなりました。ずっとひとりで抱え込んでいた。高齢の両親に心配をかけたくなくて、相談すらできなかった。「頑張ってるね」というたった一言が、どれほど救いになるか——あの日、身をもって知りました。無料で相談できる場所は、探せばあります。どうか、限界が来る前に頼ってください。
リアルで人と会う元気すらない時は、SNSで同じ境遇の人に相談するのも効果的です。SNSには不登校で悩んでいる親が想像以上にたくさんいて、「あ、これ私と同じだ」「この気持ちわかる!」と思う投稿が驚くほどたくさんあります。
中学校で不登校だった子が絵を書く仕事に憧れて美術系の大学に楽しそうに通っている話、小学校・中学校と9年間学校に行けなかった子がプログラミングと出会ってシステム系の会社でいきいきと働いている話——先輩ママの経験談ほど参考になるものはありません。
【番外編】やってはいけないこと⑥:発達特性を無視して「普通」を押し付ける
5つのリストには入れていませんが、もうひとつ声を大にして伝えたいことがあります。
息子には後からADHD(注意欠如型)のグレーゾーンであることが判明しました。集中が途切れやすい、整理整頓が壊滅的にできない、思いついたら後先考えず動いてしまう——これらは怠けや性格の問題ではなく、脳の特性でした。
でも当時の私は、それを知らなかった。親族がほぼ全員医師という家系に育った私は、「ちゃんとした道を歩ませなければ」という思いに取り憑かれていました。医者の家系なんだから、きちんと学校に行き、きちんと勉強し、きちんとした職業に就く。その「ちゃんと」を、息子にも当然のように押し付けていたんです。
息子から「普通のママが良かった」と言われました。その夜、布団の中で泣き崩れました。何度も自分を責めました。——でも今思えば、私が追い求めていた「普通」こそが、息子を追い詰めていたんです。「普通」の基準は親が勝手に作ったもの。子どもは、ありのままの親を求めているだけなのかもしれません。
発達特性のある子に「普通にしなさい」と言い続けることは、左利きの子に「右手で書きなさい」と強制するようなもの。その子の持って生まれた特性を否定することであり、自己肯定感をじわじわと削っていきます。
今振り返ると、息子が苦しんでいた原因の半分は、不登校そのものではなく、私が「普通」を押し付けていたことだったのかもしれません。
「見守りましょう」と言われて、正直キレそうになった話
不登校について調べたり相談したりすると、必ず言われる言葉があります。
「お母さん、今は見守りましょう」
正論なんだと思います。頭ではわかります。でも当時の私には、この言葉がいちばん刺さりました。
見守るって、具体的に何をすればいいの? 朝から部屋にこもっている息子を前に、黙って座っていればいいの? 仕事を時短にして収入が減って、貯金が削られていくのを「見守って」いればいいの?
「見守る」には、環境と余裕が必要だったのです。シングルマザーで、うつを抱えていて、経済的にも追い詰められている状態で「見守りましょう」と言われても、見守る側がまず壊れかけていました。
振り返ると、「見守る」が機能し始めたのは、通信講座を導入してからでした。そんなことで?と思うかもしれませんが実際にそうだったのです。それまでも口では黙っていましたが、何も言わない=見守るではなかった…私は心の中では見守れていなかったのです。子供は母親の心の中が見えています。口に出さなくても表情や態度、空気感で伝わってしまうのです。
息子が自分のペースで学べる環境ができたことで、「このままじゃ学力が……」「高校は……」という不安が少し減った。不安が減ったら、空気感も変わった。空気感が変わると、息子がリビングに出てくるようになった。
つまり、「見守る」の前に「見守れる環境を整える」が先だったんです。環境が整わないまま「見守りましょう」だけ言われても、親は追い詰められるだけでした。
もしあなたも「見守りましょう」という言葉にモヤモヤしているなら、まず自分が見守れる状態にあるかどうかを確認してみてください。相談窓口を使う、教材で学習の不安を減らす、家事の負担を手放す——親が少しでもラクになることが、結果的に「見守る」の第一歩になります。
病院のポスターで「不登校になったらやっちゃいけないことリスト」をまとめたものを読んだことがあります。「原因を問い詰めない」「一喜一憂しない」「親の不安を子どもにぶつけない」——どれも、私が全部やってしまったことばかりでした。渦中にいると、やってはいけないとわかっていてもやってしまう。人間は完璧じゃないから。でもあらかじめ知っているだけで、少しは踏みとどまれる瞬間があるかもしれないんですよね。
失敗した私だから言えること
ここに書いた5つのこと、私は全部やりました。
- 無理やり学校に行かせた
- 原因を問い詰めた
- 他の子と比較した
- 「勉強しろ」と毎日言った
- 抱え込んだ
その結果、息子との関係は最悪になり、私自身も体調を崩しました。
でも、私がこれらを全部やめたとき、少しずつ状況が変わり始めました。
息子がリビングに出てくるようになり、少しずつ会話が戻り、自分から「勉強してみようかな」と言うようになり——最終的に、自宅学習で勉強を再開し、高校受験にも合格しました。
あのとき私に足りなかったのは、「待つ力」でした。
子どもの回復を信じて待つこと。それが、親にできる一番大切なことだと今は思います。
ネットの相談掲示板で「自分の子育てが悪かったのかな」「母親失格でしょうか」という声をたくさん見てきました。
この記事を読んでくださっているあなたは、お子さんのことを必死に考えている時点で、十分すぎるほど頑張っています。私もかつて同じように自分を責め続けました。でも今振り返ると、あの苦しんだ日々も決して無駄ではなかったと思えるようになりました。
まとめ
不登校の子を持つ親がやってはいけない5つのこと:
- 無理やり学校に行かせる → 「行かなくてもいい」と伝える
- 原因を問い詰める → 「今の気持ち」に寄り添う
- 他の子と比較する → 「あなたのペースでいい」と伝える
- 「勉強しろ」と言う → 本人のタイミングを待つ
- 親だけで抱え込む → 専門家やコミュニティに相談する
- 発達特性を無視して「普通」を押し付ける → その子の特性を理解し受け入れる
もし今、「やってしまっている」ことがあっても、自分を責めないでください。それは子どものことを真剣に考えているからこそ、やってしまうことです。
気づいた今日から変えればいい。それだけで十分です。
みっこの本音——5つ全部やってしまった母より
この記事に書いた5つのこと、私は全部やりました。全部やって、全部失敗しました。
気づくのが遅かった後悔は、正直まだ消えていません。でも、気づいてからの接し方は変えられた。遅くても、変えられる。それだけは自信を持って言えます。
- やってはいけないこと①:無理やり学校に行
- やってはいけないこと②:原因を問い詰める
- やってはいけないこと③:他の子と比較する
- やってはいけないこと④:
- やってはいけないこと⑤:親だけで抱え込む


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