「勉強しなさい」「このままじゃ高校行けないよ」
不登校の息子に、私は毎日のようにこの言葉を繰り返していました。
結果どうなったか?息子は部屋に引きこもり、親子関係は最悪になりました。
この記事では、不登校の中学生に「勉強しろ」と言い続けた私の失敗談と、そこから学んだ本当に効果があった声かけについてお話しします。
「勉強しろ」と言い続けた日々
息子が不登校になったのは中学1年生の1学期でした。起立性調節障害で朝起きられず、学校に行けない日が増えていきました。
最初は体調のことを理解しようとしていました。でも、1ヶ月、2ヶ月と休みが続くうちに、焦りが怒りに変わっていったんです。
「学校は行けなくても、せめて勉強はしてよ」
「教科書だけでも開きなさい」
「このまま何もしないつもり?」
朝から晩まで、顔を合わせるたびに勉強の話。今思えば、息子にとっては地獄だったと思います。
ある日、息子の部屋のドアにこんな紙が貼られていました。

「1人で勉強する」「入る時は許可もらって」「立入禁止」——中学1年生になっても、私は中学受験の時と同じように勉強に口出しをし続けていました。息子はこうやって、紙に書いて抵抗するしかなかったんです。言葉では「うるさい」と怒鳴るだけだった息子が、わざわざ紙に書いてドアに貼った。それほど追い詰められていたのだと、今になって胸が痛みます。
しかも後になって分かったことですが、息子にはADHD(注意欠如型)のグレーゾーンという特性がありました。集中力が持続しない、気が散りやすい、忘れ物が多い——これは本人の怠けではなく、脳の特性だったんです。そんな子に「集中して勉強しろ」と言い続けるのは、目が悪い子に「裸眼でちゃんと見ろ」と言うのと同じくらい残酷なことでした。
さらに正直に言えば、私が息子に勉強を強いた根っこには学歴を重んじる家庭のプレッシャーがありました。親族はほとんどが医師で、「うちの子も医者にしなければ」という思い込みが私を支配していました。不登校になったこと自体が、私にとっては「家系の期待を裏切ること」のように感じられていたんです。
焦りは金銭面にも表れていました。個別塾は1時間8,000円。起立性調節障害で体調が安定しない息子は、予約した授業の半分近くを休みました。それでも月4万円の塾代は止まらない。「せめて塾に行ってくれれば」と思えば思うほど、家では「勉強しろ」の言葉が増えていきました。
他の選択肢も必死に探しましたが、フリースクールも専門家も費用面で断念(支援制度はこちら)。結局、どこにも頼れない焦りが塾に通わせ続ける判断につながり、そしてその分だけプレッシャーをかけてしまいました。
「勉強しろ」が逆効果になる3つの理由
理由1:自己肯定感がさらに下がる
不登校の子は、すでに「学校に行けない自分はダメだ」と感じています。
「課題やるまではスマホ貸さないよ」。そう伝えた時の息子の返事がこれです。

「そういうとこじゃん」「腹立つ」——スマホを人質に勉強させようとして、見事に逆効果でした。この一言に、返す言葉がありませんでした。
そこに「勉強もしないの?」と追い打ちをかけると、「自分は何もできないダメな人間だ」という気持ちが強くなるばかりです。
息子が後になって言った言葉が忘れられません。
「ママに勉強しろって言われるたびに、自分が消えたくなった」
私の場合——「消えたくなった」と息子から聞いた日、台所のシンクの前でしばらく動けませんでした。
理由2:親が「敵」になってしまう
学校に行けない子にとって、家は唯一の安全な場所です。
でも、その家で毎日「勉強しろ」と言われ続けると、家も安全じゃなくなる。親が味方ではなく、プレッシャーをかけてくる存在になってしまいます。
息子は次第に私を避けるようになり、部屋から出てこなくなりました。食事も「あとで食べる」と言って、私がいないときにこっそり食べるようになりました。
そしてある夜、息子から一番刺さった言葉を言われ、私は泣き崩れました(親子関係の記録)。
中学受験から私立中学校、塾代まで——教育費は膨大でした。大金をかけた末の不登校と退学。あの絶望感と、そこから通信講座にたどり着くまでの経緯は「教育費の現実と費用比較」の記事に書いています。
理由3:勉強嫌いが加速する
「勉強しろ」と言われれば言われるほど、勉強=嫌なもの、苦痛なものというイメージが強くなります。
心理学では「心理的リアクタンス」と呼ばれる現象です。人は強制されると、反発したくなる。大人でも同じですよね。
息子の場合、私が勉強のことを言うのをやめた後も、教科書を見るだけで気分が悪くなるという状態がしばらく続きました。その状態が治まるまでに、ずいぶんかかりました。
私の場合——口出しをやめてから、息子が自分からタブレットに手を伸ばすまでに、ずいぶんかかりました。待つのは言うより難しい母業でした。

あまりに勉強しない息子の気持ちを、少しでも理解したかった。本屋で手に取ったのが「勉強する気はなぜ起こらないのか」という本でした。不登校の本、起立性調節障害の本、反抗期の本——たくさんの本を読んで、息子の気持ちに近づきたかった。なぜ勉強する気が起きないのか、怠けているのではなく脳や心の仕組みがそうさせているのだと頭では理解できた。でも当時の私は、理解できても行動を変えることができなかったのです。
不登校の転機になった出来事
変化のきっかけは、スクールカウンセラーの先生との面談でした。
私が「息子が全然勉強しなくて…」と相談したとき、先生にこう言われました。
「お母さん、今この子に必要なのは勉強じゃなくて、安心できる居場所ですよ」
「勉強の遅れは取り戻せます。でも、親子関係が壊れたら、取り戻すのはもっと大変です」
頭を殴られたような衝撃でした。私は息子のためと思って言っていたことが、結局、息子を追い詰めていたんです。
「勉強しろ」をやめてから変わったこと
その日から、勉強のことは言わないようにしようと改めて強く思いました。
最初の1〜2週間は何も変わりませんでした。息子は相変わらず部屋でゲームをしていました。
でも、3週間ほど経った頃、少しずつ変化が見え始めました。
- リビングに出てくる時間が増えた
- 「今日のごはん何?」と聞いてくるようになった
- テレビを一緒に見るようになった
- ぽつぽつと学校の友達の話をするようになった
勉強の話をやめただけで、親子の会話が戻ってきたんです。
特に大きかったのは、一緒に食卓でご飯を食べられるようになったこと。「勉強しろ」と言っていた頃、息子は私と同じテーブルに座ることすら避けていました。それが、プレッシャーをやめた途端、「今日のカレー、おいしいね」なんて言いながら隣に座ってくれるようになった。偏差値や進路より、あの食卓の会話のほうがずっと価値があると、今は心から思えます。
息子はいつの間にか、自分のことよりも私の出費を心配するようになっていました
そしてある日、息子が自分から言いました。
「……ちょっと勉強、やってみようかな」
涙が出そうでした。でも、ここで「やっとやる気になったの!?」と大げさに反応したら逆効果だと分かっていたので、「いいね、何か手伝えることある?」とだけ返しました。
勉強を再開するとき、我が家が選んだ方法
息子が自分から「やってみようかな」と言ったとき、最初は塾も考えました。実際に集団塾の入塾テストを受けましたが、不合格でした(その経緯はこちら)。塾という選択肢は、向こうから閉ざされてしまったのです。
でも今振り返ると、塾に通えなくて良かったと思っています。
- 起立性調節障害で決まった時間に外出するのが難しい
- ADHDの特性で集団授業に集中できない
- シングルマザーで塾代の余裕もなかった
そこで選んだのが教材でした。
通信講座なら:
- 体調の良い時間に自分のペースで進められる
- 1回15分程度から始められる
- 前の学年に戻って復習もできる
- 月数千円で始められる
最初は1日15分、調子の良い夕方だけ。それでも息子にとっては大きな一歩でした。
「勉強しろ」の代わりに効果があった5つの声かけ
勉強のことを言わないようにしてから、私が意識した声かけを紹介します。
1. 「今日、体調どう?」
勉強の話ではなく、体調を気遣う言葉から始める。「あなたの体が心配」というメッセージが伝わります。
2. 「何か食べたいものある?」
日常会話を増やすことで、家が安全な場所だと感じてもらう。勉強以外の話題で会話のパイプを維持することが大切です。
3. 「〇〇(趣味)のこと教えて」
息子はゲームが好きだったので、ゲームの話を聞くようにしました。子どもの興味を否定しないことで、「自分を認めてくれている」と感じてもらえます。
4. 「手伝ってくれてありがとう」
ちょっとした家事を手伝ってくれたときに感謝を伝える。「自分は役に立てる」という感覚が、自己肯定感の回復につながります。
5. 「やりたくなったら、いつでも言ってね」
勉強について聞かれたときだけ、「いつでもサポートするよ」というスタンスを見せる。強制ではなく、選択肢として提示することがポイントです。
シングルマザーとして抱えていた孤独
「勉強しろ」と言ってしまう背景には、ひとりで抱え込んでいた孤独もありました。
学校行事に行けば、周りは夫婦で来ている家庭ばかり。ひとりでぽつんと座っている疎外感は想像以上でした。相談相手もいない、愚痴を言える相手もいない。その孤独感が、つい息子に「せめて勉強くらいは」と求めてしまう原因になっていたと思います。
もし同じように、ひとりで不登校の子どもと向き合っているお母さんがいたら伝えたい。まず自分自身を追い詰めないでください。親が安定していないと、子どもへの声かけも余裕を失います。
ネットの相談掲示板には「子育てから逃げたいです」「見守るのと放置の違いがわかりません」という親御さんの声がたくさんありました。
あの頃の私もまったく同じ気持ちでした。「勉強しろ」と言うのも地獄、言わないのも地獄。でも言うのをやめてみたら、少しずつ、本当に少しずつですが、息子の目の色が変わっていきました。
まとめ:「勉強しろ」は親の不安の裏返し
「勉強しろ」と言ってしまうのは、親が不安だからです。
「この子の将来はどうなるんだろう」「高校に行けなかったらどうしよう」——その不安が、つい「勉強しろ」という言葉になって出てしまう。
でも、その不安を子どもにぶつけても、何も解決しません。
大切なのは:
- まずは親子関係を修復すること
- 子どもが安心できる環境を作ること
- 子ども自身が「やってみよう」と思えるタイミングを待つこと
- そのとき、無理なく始められる学習方法を用意しておくこと
勉強の遅れは、教材などを使えば取り戻せます。でも、壊れた親子関係を修復するのは、もっともっと時間がかかります。
学歴を重んじる家庭に生まれ、偏差値こそが子どもの幸せだと信じていた私が、不登校を通じてようやく気づいたこと。子どもの幸せは、偏差値でも職業でも測れない。息子が笑顔で「ママ、今日ね…」と話しかけてくれる今の日常こそが、何より大切な「成功」なんだと。
あの頃の私のように、毎日「勉強しろ」と言ってしまっているお母さん・お父さんへ。
今日から、その言葉を「体調どう?」に変えてみてください。
それだけで、きっと何かが変わり始めます。
みっこの本音——「勉強しろ」をやめた日
「勉強しろ」をやめるのに、ずいぶんかかりました。やめた日のことは覚えていません。気づいたら言わなくなっていた、という感じです。
今でも完全にはやめきれていないかもしれません。口には出さなくても、心の中で思ってしまう瞬間はまだあります。
- 「勉強しろ」と言い続けた日々
- 「勉強しろ」が逆効果になる3つの理由
- 不登校の転機になった出来事
- 「勉強しろ」をやめてから変わったこと
- 勉強を再開するとき、我が家が選んだ方法


コメント