起立性調節障害の中学生に、午前中の勉強を強いるのは酷なことです。
朝7時、私はまた息子の部屋のドアの前に立っていました。
「起きて…お願いだから起きて…」
声をかけても返事はない。ドアを開けると、布団にくるまったまま微動だにしない息子。肩を揺すっても、カーテンを開けても、起き上がれない。これが「怠け」ではなく病気だと頭では分かっていても、毎朝繰り返されるこの光景に、心が折れそうになる日々でした。
退学した学校の制服を見かけるだけで動悸が止まらず、外出そのものが恐怖になっていきました。
息子の出席に一喜一憂し、休んだ日は私まで寝込んでしまう——そんな毎日に、私自身が壊れかけていました。
やっとの思いで学校に送り出しても、面談で「午前中はほぼ居眠りしています」と告げられる。起立性調節障害の診断書を出していたので先生に怒られることはなかったけれど、授業を全く聞けていないという事実は、私の焦りをどんどん加速させました。
この記事では、そんな「毎朝の地獄」を経験した私が、息子と試行錯誤しながらたどり着いた「午後から始める学習スケジュール」と、起立性調節障害の中学生が無理なく勉強を続けるための時間術をご紹介します。
はじめに|「午前中は勉強できない」が大前提
起立性調節障害の子どもにとって、午前中は「戦力外」です。これは怠けではなく、自律神経の病気による症状。まずこの事実を親が受け入れることが、学習スケジュールを組む第一歩です。
我が家の息子も、中学時代は午前10時まで起き上がれない日がほとんどでした。最初は「朝起きて勉強させなきゃ」と焦りましたが、それは完全に間違いでした。
塾も検討しました。でも起立性調節障害で朝起きられないと生活リズム全体が狂ってしまうんです。夕方にぐったり寝てしまうこともあれば、塾に通えば夜が遅くなり、翌朝さらに起きられなくなる悪循環。結局、塾は半分以上休んでしまい、「月4万円払って半分休まれるのは勿体ない」という現実に直面しました。
フリースクールも調べました。でも近所のフリースクールは月4万円。起立性調節障害で学校にすら行けない息子が、フリースクールに通えるとも思えませんでした。電話をかけて費用を聞いた瞬間、「うちには無理だ」と受話器を置き、それ以上調べるのをやめてしまったのです。
シングルマザーの私にとって、教育費の負担は常に重くのしかかっていました。公立に転校して就学援助で給食費が安くなった時、それだけでほっとした——そんな状況だったのです。限られた予算の中で、息子の学びを止めない方法を必死に探していました。
だからこそ、時間に縛られない「午後スタート」の学習スケジュールが必要だったのです。
我が家の実際のスケジュール|「午後2時スタート」で安定した
体調が良い日のスケジュール
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 10:00〜11:00 | 起床・朝食(無理に早起きさせない) |
| 11:00〜13:00 | 自由時間(体を慣らす・好きなことをする) |
| 13:00〜13:30 | 昼食 |
| 14:00〜15:00 | 【勉強①】映像授業(スタディサプリ)2〜3本 |
| 15:00〜15:15 | 休憩 |
| 15:15〜16:00 | 【勉強②】問題演習(進研ゼミ) |
| 16:00〜17:00 | 自由時間・散歩 |
| 19:00〜20:00 | 【勉強③】復習・間違い直し |
1日の勉強時間は約2〜3時間。これを聞くと少ないと感じるかもしれませんが、学校に行けていない子が毎日2時間集中できれば、十分な学力は身につきます。
体調が悪い日のスケジュール
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 〜14:00 | 休養(罪悪感を持たせない) |
| 15:00〜15:30 | 映像授業1本だけ見る(ベッドの上でOK) |
| 夜 | 余裕があれば確認テスト1つ |
体調が悪い日の目標は「1つだけやる」。映像授業を1本見るだけでもいい。ゼロの日を作らないことが、学習習慣を維持するコツでした。
スケジュールを組むときの5つのルール
ルール1:午前中に勉強を入れない
起立性調節障害の症状が最も重いのは午前中。午前中の勉強は一切計画に入れないのが鉄則です。「朝起きたら勉強」というスケジュールは、体調が悪い日に「今日もできなかった」という挫折感を生むだけです。
ルール2:「体調が悪い日バージョン」を用意する
毎日同じスケジュールで進めようとすると、体調が悪い日に計画が崩れてモチベーションが下がります。最初から「良い日」と「悪い日」の2パターンを用意しておくと、悪い日でも「予定通り」と思えます。
ルール3:1コマは30〜45分が限界
起立性調節障害の子は集中力の持続時間が短いことが多いです。1時間連続は厳しいので、30〜45分勉強→15分休憩のサイクルがベスト。通信講座の映像授業は1本15〜20分なので、このリズムに合いやすいです。
息子の場合、起立性調節障害に加えてADHD不注意型のグレーゾーンの特性もあり、集中できる時間帯にさらに「波」がありました。午後2時に調子が良くても、15分後にはふっと集中が途切れてしまう。そこで我が家では、「集中が切れたら無理に戻さず、5分間好きなことをしてからリスタート」というルールを作りました。ADHDの特性を無視して「座っていなさい」と強制するより、短い休憩を挟みながら細切れに進める方が、結果的にトータルの学習量は増えたのです。
ルール4:夜型を否定しない
起立性調節障害の子は夜のほうが体調が安定することが多いです。「夜に勉強するのは不健康」という常識にとらわれず、子どもの体調が一番良い時間帯に勉強を入れるのが正解です。
息子の場合、19〜20時が一番集中できる時間帯でした。
ルール5:週に1日は「完全休養日」を作る
不登校で毎日家にいると、「毎日勉強できるはず」と思いがちですが、心身の回復には休みが必要です。我が家は日曜日を完全オフにして、勉強のことは一切考えない日にしていました。
通信講座が起立性調節障害の学習スケジュールに合う理由
正直に言うと、最初は通信講座に期待していませんでした。「通信講座」と聞いて思い浮かべたのは、私が中学生の頃の紙のドリル。届いても手をつけず積み上がっていく、あのイメージです。でも実際に調べてみると、AIをフル活用したタブレット学習に進化していて驚きました。苦手な範囲をAIが自動で分析して、息子に合った問題を出してくれる。「これなら起立性で生活リズムが不安定な息子でも続けられるかもしれない」——その瞬間、暗かった気持ちに光が差しました。
- 時間に縛られない:塾のように「何時に行く」がないから、体調に合わせて開始できる
- 映像授業は短い:1本15〜20分なので、集中力が持たない日でも取り組める
- 倍速・巻き戻し可能:体調が良い日は倍速で効率よく、悪い日はゆっくり
- ベッドの上でも勉強可能:タブレットがあれば場所を選ばない
親がやるべきこと・やってはいけないこと
やるべきこと
- 子どもと一緒にスケジュールを「相談して」決める(押し付けない)
- 体調が悪い日は「今日は休もう」と許可を出す
- 「今日も頑張ったね」と小さな成果を認める
- 通信講座の進捗を(口出しせず)見守る
やってはいけないこと
- 「もう昼なのにまだ寝てるの?」と責める
- 学校に通っている子と比較する
- スケジュール通りにいかない日に怒る
- 「午前中に勉強すれば夜遊べるのに」と言う
まとめ|起立性調節障害の勉強は「午後から」が正解
起立性調節障害の子の学習スケジュールは、「午前中を捨てる」ことから始まります。
これは消極的な選択ではありません。子どもの体調に合わせた「最適化」です。午後からの2〜3時間を毎日積み重ねれば、高校受験に十分な学力は身につきます。
もうひとつ、私が伝えたいことがあります。不登校で自信をなくしていた息子ですが、心のどこかに小さな火が残っていました。「本気を出せばできるはず」——中学受験で難関校に合格した成功体験が、息子の中で消えずに燃え続けていたのです。あの経験があったからこそ、通信講座で毎日少しずつ勉強を続けることができたのだと、今になって思います。
大切なのは、完璧なスケジュールを組むことではなく、「悪い日でもゼロにしない」柔軟さ。通信講座はそのための最高のツールでした。
そして最後に、希望の話をさせてください。
あれだけ朝起きられなかった息子が、高校に入って変わりました。
きっかけは「友達」でした。高校で気の合う仲間ができると、「明日も学校に行きたい」という気持ちが芽生えたんです。ダラダラと夜遅くまで起きていたあの息子が、自分から早く寝るようになりました。
それだけじゃありません。ずっと処方されていた睡眠障害の薬——いくら「飲みなさい」と言っても絶対に飲まなかったあの薬を、毎日自分から飲み始めたのです。親が言っても動かなかった子が、自分の意志で生活習慣を変え始めた。
ある朝、息子が学校に出かけたあと、薬のシートを見たら1粒減っていました。たったそれだけのことなのに、涙が止まりませんでした。「ああ、この子は自分の力で前に進んでいるんだ」と、息子の成長を静かに噛みしめた朝でした。
今、毎朝起こすのが辛くて辛くて仕方ないお母さん、お父さん。午前中が「戦力外」の時間は、ずっとは続きません。子ども自身が「変わりたい」と思える居場所を見つけたとき、驚くほど自然に生活は変わっていきます。
それまでは、午後からのスケジュールで、焦らず一歩ずつ。通信講座という武器を使いながら、お子さんのペースで歩んでいきましょう。


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