起立性調節障害でも中学受験を続けた話|受験当日の薬・D判定から合格までの全記録

記事ID:1315 起立性でも中学受験はできるD判定から合格までの記録 アイキャッチ(caseE版) 不登校の悩みと向き合い方

「起立性調節障害でも受験を続けていいのだろうか」

もしあなたが今この問いに苦しんでいるなら、うちの記録が何かの肩の力を抜くきっかけになったらいいなぁ、と思って書きます。

小学6年生の11月——受験まであと2ヶ月というタイミングで、息子は起立性調節障害を発症しました。朝起きられない。模試の偏差値は急落。D判定。

それでも息子は受験を続け、第一志望の難関私立中学校に合格しました。この記事では、発症から合格までの全記録を書きます。

発症——受験2ヶ月前の絶望

みっこのアイコン
みっこ受験2ヶ月前の発症でした。「辞めよう」と言ったのは私。でも「受けたい」と言ったのは息子でした。

小学6年生の11月のことです。

ある朝、息子が起きてきませんでした。何度声をかけても「体が動かない」「頭が重い」と言うばかり。最初は風邪かと思いましたが、日を追うごとに同じ症状が続きました。

病院に駆け込んで言われた診断名が「起立性調節障害」でした。

朝起きられない。午前中はぼんやりして頭が回らない。受験本番は午前スタート——これがどれだけ致命的か、受験を経験した方ならわかると思います。

それまで安定していた模試の偏差値が、全教科で5〜10下がりました。D判定。志望校の合格圏から一気に外れたのです。

3年間必死に走ってきたのに、あと2ヶ月というところで体が悲鳴を上げた。息子の顔から表情が消えていくのを見て、私は言葉を失いました。言葉を失ったというより、先に私の方が言葉を置き忘れた感覚でした。同じように受験直前にお子さんの体調が崩れた方の苦しみは、本当によく分かる。あの頃の自分に、無理だけはさせないでって今でも伝えたくなる。

医師の言葉——「過度なストレスが引き金です」

小児科の医師にこう言われました。

過度なストレスが引き金になっています。3年間の受験勉強で自律神経のバランスが崩れたのでしょう。

私は目の前が真っ暗になりました。診察室の椅子の座面の硬さだけが、今でも体に残っている。

息子が苦しんでいるのは、私が中学受験を勧めたからだ。「中高一貫に入れば高校受験をしなくていいから楽だよ」と言って、3年間も過酷な勉強をさせてしまった。

息子の体を壊したのは私だ——そう思うと、自分を責める気持ちが止まりませんでした。

でも医師は続けてこう言いました。「お母さんのせいではありません。起立性調節障害はこの年齢の子に多い病気です。ただ、ストレスが症状を悪化させることはあります。」

頭では理解しても、気持ちはなかなか追いつきませんでした。今もそのぶんの追いつけなさを、私の中のどこかに抱えたまま暮らしている気がする。

それでも「辞めたくない」と言った息子

受験をやめようか——そう切り出したのは私の方でした。

体が辛いのに無理を続けて、もっとひどくなったらどうするの。受験なんていつでもできる。今は体を休めよう、と。

息子はしばらく黙っていました。そして、こう言ったのです。

落ちる自信しかない。でも、合格したい。

矛盾した言葉でした。でもその矛盾の中に、息子の本気が詰まっていました。3年間頑張ってきた自分を、最後まで信じたかったのだと思います。

私は息子を抱きしめて「大丈夫だよ」と言いました。大丈夫かどうかなんてわからなかったけれど、息子がやりたいと言うなら、私は全力でサポートすると決めました。

お子さんが「やりたい」と言ったとき、その言葉を信じてあげてください。子どもは自分の限界を、親が思っている以上にわかっています。私も当時は信じるしかなかった、というのが正直なところ。でもあの信じるしかなかった夜が、結果的には息子の『受かりたい』を一番守った選択だったんじゃないかなぁ、って今は思う。

起立性発症後の急降下

起立性調節障害を発症する前の息子は、塾の上位クラス(Vクラス)に在籍し、算数ではクラス1位を取ったこともありました。理科も社会も驚くほど良い偏差値を叩き出すことが多く、先生には「県内で1番いい学校が狙えますよ」と何度も言われていました。

唯一の弱点は国語でした。他の科目よりマイナス20という偏差値も珍しくないほど。特に長文問題を極端に嫌がりました。でも私たちはそれを逆手に取ることにしました。悪い科目を伸ばそうとせず、良い科目・好きな科目を伸ばす作戦。国語の長文は捨てて、算数で合格を狙いに行くと決めたのです。今思えば、この「苦手を無理にやらせない」戦略がADHD傾向のある息子には合っていました。興味のないことは何時間やっても頭に入らない。それなら得意科目に集中した方がいい。

しかし、小学6年生の11月に起立性調節障害を発症してから、すべてが変わりました。

得意だったはずの算数すら、成績がみるみる下がっていったのです。試験中に眠くなる。午前中は体調が優れず、頭がぼんやりする。過去問で65点を超えたことがなかった——これは起立性になってからの話です。発症前なら考えられない点数でした。

私は授業のコマ数を減らして、少しでも身体を休ませようとしました。やったことは、国語の授業を全部捨てること。塾の先生には「そんなことしちゃダメです…」と驚かれましたが、気にしませんでした。起立性のことを相談していたため、国語の授業の間は別室で横になって休ませてもらうこともできました。

直前特訓は土日9時間というハードなスケジュール。その中で国語の時間に仮眠を取らせるだけでも、他の科目への集中力は格段に上がると考えたのです。

忙しい息子に代わって、過去に間違えた問題を私が全部ノートにまとめていました。間違えた問題だけをさっと復習できるようにしたもので、全教科でこの「間違いノート」を作っていました。息子も「自分が間違えた問題だけ重点的に取り組める。合ってた問題を2回3回解かなくていいから助かる」と言ってくれていました

息子の計算ノート

それでも成績は戻りませんでした。模擬試験では3年間目指していた学校に「不合格」判定。クラスも下がっていきました。

これが起立性になる前のA判定のレーダーチャートです。この数字を見て息子も安心して勉強に取り組めていました。

模試A判定のレーダーチャート

そして起立性になってからの判定がこちらです。

起立性発症後のD判定

残酷なことに第一志望校だけでなく、今まで余裕だと思っていた滑り止めの中学校も含めて全てD判定に。

滑り止め校もD判定

息子は自信をなくし、模試を受ければ受けるほど不安を口にするようになりました。模試の日は迎えに行く前に息子からこんなLINEが届くようになりました。

模試後のしょぼーんスタンプ連打LINE

「またできなかった」というのを早く私に伝えて、「大丈夫だよ」と言ってほしかったのだと思います。

このままの状態で本番に挑むのか……正直、心の中は絶望的だったなぁ。模試の結果票を夜中にもう一度読み直す日が、週に何回かあった。でも息子が3年間頑張ってきた知識は頭の中にしっかりと残っている。力を出せば絶対に大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながら、受験日当日を迎えました。

机の下でうずくまった日

ある日、部屋に入ると息子がいない。いつもなら机で勉強しているはずの場所に、息子の姿がありませんでした。慌てて探すと、机の下でうずくまっていたのです。

机の下でうずくまる息子の様子

※息子の許可を取って掲載しています

「大丈夫だよ。ママがスケジュール考えるから」——それしか言えませんでした。

しばらくして、息子は自分から立ち上がり、机に向かいました。その背中から、「必ず受かってやる」という強い意思を感じました。この子は折れそうだっただけで、折れてはいなかった。あの瞬間を見ていなかったら、私の方が先に諦めていたかもしれません。

薬とカフェインの試行錯誤

医師と相談し、血圧を上げる薬を処方してもらいました。先生は「効果を実感する人が多い」と言ってくれましたが、息子には目に見えた効果は感じられませんでした。午前中のぼんやりは変わらず続きました。

そこで試したのがカフェイン錠剤でした。

ある診察の日、医師が息子に直接こう聞きました。

「絶対合格したいんか?」

息子は迷わず「合格したい」と答えました。

医師は少し間を置いて、私にこう言いました。

「本来すすめられるものではないが、高濃度カフェインを飲むと居眠りがマシになるかもしれません。」

正直、迷いました。12歳の子どもに、本来飲ませるべきではないものを飲ませる。母親として、それでいいのかと。袋から取り出して息子に渡す指の感触が、今も少し手に残っているくらい。

でも夜中にうわごとで「落ちる……落ちる……」と呟く息子の声を聞いていた。「こわいよ」と震える息子を抱きしめた日を覚えていた。38度の熱でも参考書を手放さなかったあの目を知っていた。

息子の「合格したい」という気持ちの前で、私は身体より受験を優先することを選びました。毎日ではなく、模擬試験や大事な日だけ。それが私たち親子の折り合いのつけ方でした。

起立性調節障害の息子が受験のために飲んでいた高濃度カフェインです。本来子供に飲ませるものではありません。

血圧を上げる薬だけでは変化を感じられませんでしたが、カフェインの薬を併用することで、受験当日など「ここぞ」という日は乗り越えられるようになりました。

ある日の模試で、息子が帰ってきて開口一番こう言いました。

「久々に算数できた!午前の試験で初めて寝なかった!」

嬉しそうな顔を見て、胸がいっぱいになりました。たった1回の模試かもしれない。でも「やれる」という手応えを息子が感じてくれたことが、何より大きかったのです。

起立性のお子さんを持つ方へ、1つだけ。薬やカフェインの使い方は必ず主治医と相談してください。うちは偶然、合う組み合わせが見つかっただけ。体質も症状も子どもの数だけ違うから、よそのうちの話をそのまま真似しないでほしい、というのが母として一番伝えたいこと。

実際に飲んだのは、写真の一番手前にあるカフェインの薬という高濃度カフェインの錠剤です。医師にこっそり勧められたものの、本来は子供に飲ませるものではありません。それでも、息子の3年間の努力をどうしても実らせてあげたかった。

実際に飲んでいたカフェインの薬(手前)と高濃度カフェイン

本命校の受験は午前中。この薬のおかげか、午前の試験で寝ることはありませんでした。午後の滑り止め校の受験前にも追加で飲みましたが、さすがに体力の限界だったのか午後の試験では寝てしまったそうです。翌日の第二志望校(午前)の時にもこの薬を飲んで、寝ずに受験できました。

薬やカフェインに辿り着く前に、実際のところ自己判断で試したものもあります。

起立性対策で買ったメラトニングミ

子供用のメラトニングミ。起立性の睡眠リズムを少しでも整えられないかと思って購入しました。結果は、息子には全く効果がありませんでした。

起立性調節障害は自律神経の問題であり、市販のサプリメントでどうにかなるものではありません。やはり病院に行くのが大切です。もしお子さんが病院を嫌がっている場合でも、親だけで事情を話せば薬を出してくれる病院はあります。まずは電話で相談してみてください。遠回りせずに、最初から専門家に頼ることをおすすめします。

📋 起立性調節障害の子が受験するときに気をつけること▼ タップして開く
💡 受験当日の移動・仮眠・午後試験戦略など、我が家の経験+起立性の知識をまとめました

起立性調節障害とは(受験に影響するポイント)

  • 午前中は血圧が上がらず脳に血液が届かない:自律神経の機能不全により、起床後数時間は頭がぼんやりする。午前中の試験で本来の実力が出せないリスクがある。
    私の場合——朝、息子の枕元で何度声をかけても反応がない理由が、これだったんだと後で分かりました。
  • 症状は日によって異なる:調子のいい日と悪い日の差が大きく、模試ではできても本番で症状が出る可能性がある
  • ストレスで悪化する:受験のプレッシャーが症状を悪化させることがある。逆に「憧れの学校に行ける」という前向きな気持ちが症状を和らげることもある。
    私の場合——受験塾の呼び出し連絡が鳴るたびに症状が重くなる、という時期がありました。
  • 思春期に多い:小学校高学年〜中学生に多く発症。中学受験の年齢と完全に重なる

受験戦略:午前を捨てて午後に集中する選択肢

  • 午後試験のある学校を志望校に入れる:起立性で午前中に体が動かない場合、午後試験に絞ることで受験できる学校数は減るが、体調が安定した状態で受験できる。我が家も午後試験で寝なかった
  • 午前試験で遅れた子用の別室がある学校も:地域によるが、40分遅れの子のための受験室を用意している学校がある。事前に確認しておくと選択肢が広がる
  • 連日受験の体力配分:午前+午後の連続受験は体力が持たない可能性が高い。我が家も午後の試験では薬を追加で飲んでも寝てしまった

電車でも見られるようにポケットサイズで作ったプリント

電車でも見られるようにポケットサイズで作ったプリント

受験当日の移動と仮眠

  • 移動は車かタクシーが鉄則:電車での乗り換え移動は身体が休まらない。車なら移動中に目を閉じて体力を温存できる。シングルマザーで車がない場合はタクシーを検討。
    私の場合——シンママで車がなく、本番は電車で向かいました。息子は座れた駅から目を閉じて体力を温存していた。
  • 午後試験の前に必ず仮眠を取らせる:午前の試験後〜午後の試験前の空き時間に、車の中やホテルのロビーなどで少しでも目を閉じさせること。15分の仮眠でも血圧が回復する可能性がある
  • 会場近くの休憩場所を事前に確認:カフェ・図書館・車の中など、横になれなくても静かに目を閉じられる場所を事前にリサーチしておく

薬・カフェインの使い方

  • 必ず主治医と相談:カフェイン錠剤や血圧を上げる薬の使用は自己判断しない。受験スケジュールを全て医師に共有して調整する
  • 模試で事前にテストする:「何分前に飲めば効くか」「何時間持つか」を本番前の模試で必ず確認する。我が家は毎日ではなく大事な日だけ飲ませていた
  • カフェインは1日の上限を守る:子供へのカフェイン摂取は本来推奨されない。医師の指示量を絶対に超えない
  • 効果が切れるタイミングを把握する:午後に追加で飲む場合、午前の服用から何時間空けるべきか医師に確認。我が家は午後に追加したが体力限界で寝てしまった

受験前日〜当日朝の過ごし方

  • 睡眠リズムを1週間前から調整:起立性の子は睡眠リズムが崩れると翌朝のダメージが倍になる。受験1週間前から就寝時間を少しずつ早める
  • 前日の夕食はとんかつ:我が家は「勝つ」の縁起担ぎで毎回とんかつでした。
    息子が『またとんかつ?』と笑う顔だけで、私の手は少し震えが止まった。
  • 当日朝は無理に起こさない:「早く起きなさい!」は逆効果。目覚ましの30分前に部屋の電気をつけて光で自律神経を刺激する方が効果的
  • 朝食は消化のいいものを少量:満腹は血圧を下げて眠気を誘う。おにぎり1個+温かいスープ程度が目安
  • 「寝坊しても大丈夫」の安心感を与える:「タクシーで行けばいい」「遅刻しても受験できる学校もある」など、プランBを前夜に共有しておく

入学後に気をつけること

  • 「配慮する」と言われても安心しすぎない:受験前に学校が「起立性への配慮あり」と言っても、入学後の実態は異なる場合がある。我が家は「お前1人に時間をかけれない」と何度も言われた。
    この言葉を何度も言われた夜、玄関でしばらく動けないまま立ち尽くす夜が続きました。
  • 起立性で私立中を辞める子は多い:この事実を入学前に知っておくべき。先生にも後から「実は多いんですよ」と言われた
  • 通信制高校や転校のプランBを持っておく:「この学校しかない」と思い込まない。N高などの通信制を事前に調べておくだけで親の精神的余裕が違う

⚠️ 重要:カフェイン錠剤の使用は必ず主治医の指導のもとで行ってください。また、起立性調節障害の症状や経過には個人差があります。この記事は我が家の経験をもとにしたものであり、全てのお子さんに当てはまるわけではありません。必ず主治医に相談してください。

塾から逃げ出した日

受験が近づくにつれ、息子の不安は大きくなっていきました。

ある日、塾から「息子さんが見当たりません」と電話がかかってきました。慌てて塾に駆けつけると、非常階段に息子がうずくまっていました。

「ママ……不安だよ。どうしたらいい?」

まだ12歳の子どもが、非常階段で膝を抱えて震えている。その姿を見た瞬間、受験なんかどうでもいい、この子を守らないとという気持ちでいっぱいになりました。

私は何も言えずにただ隣に座りました。しばらく2人で黙って座って、息子が落ち着いてから「帰ろうか」と声をかけました。

あの日のことは別の記事でも書いていますが、ここでは親としての気持ちだけを書きます。子どもが不安で押しつぶされそうになっているとき、親にできるのは「そばにいること」だけです。正解の言葉なんてありません。ただ、逃げずにそこにいること。それだけが親の仕事なのだと、あの非常階段で学びました。あの非常階段の冷たさと、息子の『こわいよ』の震える声だけは、今も体に残っている。

38度の熱でも勉強した受験直前

受験の1週間前、息子は38度の熱を出しました。

「今日は休みなさい」と言ったのに、気づいたら布団の中で自由自在(理科の参考書)を読んでいました。

「やめなさい」と言おうとして、言葉を飲み込みました。息子の目は真剣でした。熱があっても、最後まで諦めたくないのだと、その目が語っていました。

起立性調節障害で朝起きられない。38度の熱がある。それでもページをめくる手は止まらない。この子は本当に合格したいのだと、改めて思い知りました。

親としては体調を最優先にしてほしい。でも子どもの「やりたい」を奪う権利は、親にはないのかもしれません。

暗記物は最後に集中的に叩き込むという計画でした。この一問一答の本は重要事項が分かりやすく簡潔にまとめられており、短時間で要点を確認できるので受験最後の1週間で大活躍しました

受験最後の1週間に活躍した一問一答

受験の前日の夕飯は、毎回とんかつでした。『勝つ』の縁起担ぎ——中学受験の時も、高校受験の時も。息子は『またとんかつ?』と笑っていましたが、私にとっては祈りに近いものでした。

受験前日に毎回食べていたとんかつ定食

受験の前、私がしていたことがもう一つあります。棚に飾ってある合格祈願のグッズに手を合わせること。

兄弟の合格祈願グッズを飾った棚

これは私の兄や弟が大昔に受験した時のものです。絵馬、お守り、必勝のしゃもじ。息子にもパワーをあげてほしいという思いで、ずっと棚に飾っていました。中学受験の前も、高校受験の前も、この棚の前に何度も立って「お願い。息子を合格させてあげて」と手を合わせていました。

受験本番の朝

受験当日の朝。少しでも寝た方がいいので車で向かうことも考えましたが、渋滞したらアウト。結局、電車で2人で向かいました。

受験会場に向かう電車の中で、息子は参考書を読んでいました。1点でも多く取りたかったのだと思います。

受験当日、電車の中で参考書を読む息子

学校に着き、試験会場に向かう息子の後ろ姿は、なんだかたくましかった。数日前まで「不安だよ」と震えていた子が、覚悟を決めて戦いに行く背中。その姿は今も脳裏に焼きついています。まだ小学生なのに、私より遥かに立派でした。

私は不安で心配で、心臓が破裂しそうでした。

約4時間の待ち時間

息子を送り出した後、私は食堂に座って約4時間待っていました。息子が入っていった会場が見える位置に座り、「どの部屋に息子がいるのだろうか」とソワソワしていました。ジュースすら喉を通らないほどの緊張。ただ座って、祈るしかなかった。

試験が終わって出てきた息子は、算数ができたと言いました。息子は算数の話しかしませんでしたが、その表情から「受かったかもしれない」という手応えを感じているのが伝わってきました。

💡 受験を待つお母さんへ:待っている間、足腰が冷えてすごく辛かったです。ブランケットを1枚持っていくことを強くおすすめします。食堂やロビーは暖房が効いていても、何時間も座っていると体が冷え切ります。

合格発表の瞬間

本命校の合格発表の日、息子は第二志望の学校の受験中でした。私は画面を開きました。

「合格」の文字を見た瞬間、10秒ほどフリーズしました。驚きと喜びが同時に押し寄せて、体が動かなかった。周りには他の保護者もいたので、トイレに駆け込んで飛び跳ねて喜びました。願いが叶った子供のような喜び方でした。

これが実際の合格画面です。

本命中学校の合格画面

第二志望の受験を終えて出てきた息子に、私はピースサインを送りました。息子は「え?ほんとに?ほんと!?画面見せて!早く!」と大興奮。起立性というハードルを乗り越え、カフェインを飲みながら受験に臨んだ日々。一時はダメかと諦めかけたこともありましたが、粘ったおかげで合格を勝ち取ることができました。

人生で数回味わうかどうかの、感激の瞬間でした。

親戚に送った合格報告LINE

合格の文字を見た瞬間、興奮して親戚たちにLINEを送りました。医師家系で教育熱心な親戚が多かったので、息子の受験を皆が気にかけてくれていました。

合格報告LINEで興奮する親戚

興奮しすぎて「行きたがって」を「生きたがって」と誤字しています。それくらい手が震えていました。

📱 他の親戚のLINEも見る

兄からは「見間違いじゃないか、もう1回確認しや」と返ってきました。信じられなかったのだと思います。

兄のLINE返信

別の親戚からは「やったーやったー!!!」とテンション爆上げのLINEが。

やったーと喜ぶ親戚のLINE

この日からしばらくお祝いムードが続きました。あの頃が、人生で一番幸せだったかもしれません。

同じ選択をしようとしているお母さんへ

もし私と同じように、カフェインを飲ませて受験に挑もうとしているお母さんがいたら、伝えたいことがあります。お子さんの意思を、何よりも尊重してあげてほしいということ。

私にはかなり葛藤がありました。ここまでして受験させる必要があるのか。身体に悪いものを飲ませてまで私立中学校に行かせるのは、親のエゴではないか。何度も何度も息子に確認して、最終的には息子自身の「受かりたい」という意思を優先しました。

しかし後になって知ったのですが、影でこう言われていたそうです。

「起立性で私立中学校に入れて結果退学なんて、息子さんかわいそう。こうなることは目に見えていたのに受験中断を選ばなかったんだね」

——ママ友の言葉は、間違っていませんでした。実際に起立性調節障害で私立中を辞めていく子は多いと、後から中学校の先生にも言われました。ギリギリでも無理やりでも滑り込めばあとはなんとかなる——そう考えていた私の方が甘かったのです。『合格』という言葉を、ゴール扱いしていた自分のことが、ちょっと恥ずかしいなぁ。

また、「憧れの学校に通える喜びで精神面から起立性の症状がおさまることも十分に考えられる」と医師に言われていたこともあり、自分に都合の良い言葉ばかりを信じていました。

もちろん、受験前に学校側には「起立性への配慮はあるか」と確認を取っていました。保健室での受講や、遅れた分のサポートはしっかりやるとの回答をもらっていたのです。でも今思えば、「起立性の子はうちでは無理です」なんて言う学校があるわけがない。入学後に実際に待っていたのは、「お前1人に時間をかけれないんや!」という叱責でした。何度も言われました。

つまり、起立性で勉強に遅れが出た子にも、先生は同じような気持ちで接するのだと身をもって知りました。配慮があると言われていたのに、実際には「手のかかる子」として扱われていた。

受験を諦めるべきだったとは、今でも思いません。息子自身が望んだことだったから。でも、「入った後に何が待っているか」まで想像できていたら、もう少し違う選び方ができたかもしれない。同じ立場のお母さんには、合格がゴールではないということだけは、伝えておきたいのです。

受験本番——算数113/120点の大逆転

受験当日の朝、息子は信じられないことに自分で起きてきました。家を出る前、愛犬にいつもより豪華な朝ごはんをあげました。愛犬からもエールを送ってほしくて、特別なご飯にしたのです。

カフェインの薬を飲み、2人で家を出ました。

受験当日の朝、愛犬にあげた特別な朝ごはん

受験期の朝ごはんと愛犬

試験が終わって出てきた息子は、少し疲れた顔でこう言いました。

「算数、たぶんめっちゃできた。」

結果は120点満点中学1年生13点。

過去問で65点を超えたことがなかったのです。起立性調節障害でD判定だったのです。それなのに、本番で113点。

私は結果を見たとき、しばらく画面を見つめたまま動けませんでした。3年間の勉強、起立性の発症、非常階段で震えていた日、38度の熱で自由自在を読んでいた姿——すべてが報われた瞬間でした。

起立性をものともしない集中力。あれは息子の「どうしても合格したい」という強い気持ちが生んだものだと思います。

合格発表の夜

合格を確認した瞬間、息子は「え?ほんとに?」と大興奮でした。

そしてその夜、何度も何度もこう繰り返しました。

「人生で一番嬉しい日だな。」

ご飯を食べているとき、テレビを見ているとき、お風呂に入る前——ふとした瞬間に「人生で一番嬉しい日だな」と呟く息子。12歳の子どもが「人生で一番」という言葉を使うほどの喜びでした。

私も嬉しかった。本当に嬉しかった。

でも今だから書けることがあります。この先に待っていたのは、不登校でした。

難関私立中学校に入学して1週間で起立性調節障害が再発し、息子は学校に通えなくなりました。あれほど喜んだ合格が、新たな苦しみの始まりになるとは、あの夜の私たちには想像もつきませんでした。

でも、だからといって受験したことを後悔してはいません。あの日の「人生で一番嬉しい日だな」は、息子の人生に確かに刻まれた成功体験です。

起立性調節障害のお子さんが受験を続けるなら

我が家の経験から、お伝えしたいことをまとめます。

1. 体調管理を最優先に

受験よりも体が大事です。当たり前のことですが、受験が近づくと親も子も見失いがちです。主治医との連携は絶対に欠かさないでください。

2. 午後受験を積極的に選ぶ

起立性のお子さんにとって午前の試験は不利です。午後入試がある学校を調べておくと、選択肢が広がります。我が家は午前受験でしたが、午後受験があればそちらを選んでいたと思います。

3. 通信講座という選択肢を持っておく

受験後、もし体調が悪化して学校に通えなくなっても、自宅学習があれば学習を続けられます。我が家は中学入学後に不登校になりましたが、教材のおかげで高校受験にも対応できました。「もしもの時の備え」として知っておくと安心です。

4. 子どもの「やりたい」を必ず確認する

一番大切なのは、受験を続けるかどうかを子ども自身に決めさせることです。親が「続けなさい」と強制してはいけません。同時に、子どもが「続けたい」と言ったなら、その気持ちを尊重してあげてください。

まとめ|起立性でも受験は不可能じゃない。ただし子どもの声を聞いて

起立性調節障害を抱えながらの受験は、簡単ではありませんでした。でも不可能でもありませんでした。

息子が合格できたのは、本人の「合格したい」という強い意志があったからです。私はただ、その意志を支えただけです。

もしお子さんが起立性で受験を迷っているなら、まずお子さんに聞いてください。「どうしたい?」と。

子どもが「やりたい」と言うなら、親は全力で環境を整える。体調が悪化したら立ち止まる。その繰り返しで、我が家は合格にたどり着きました。

あなたのお子さんにも、きっと道はあります。

この記事のポイント
  • 小学6年生の11月に起立性調節障害を発症。受験2ヶ月前から成績D判定
  • それでも息子は「落ちる自信しかない。でも合格したい」と受験続行を選んだ
  • 塾の国語授業を全カット→休息に充てる戦略。苦手は捨てて得意科目で勝負
  • カフェインの薬に救われた。試験中の眠気対策は主治医と相談必須
  • 3年間の努力の先に、第一志望合格。算数で120点満点中学1年生13点
  • 同じ状況のお子さんへ——「受けたい」と言ったら、親の『無理させたくない』より本人の意思を信じていい
発症からの道のりは壮絶でしたが、息子の「受けたい」を信じてよかったと今は思える。

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高校生になった息子のカバンの中

起立性調節障害の症状は、高校生になった今ではだいぶマシになりました。毎日学校に通えるようになり、バイトも始めました。でも完全に治ったわけではない。

ある日、息子のカバンの中にこんなものが入っていました。

高校生の息子がカバンに入れている眠気覚ましグッズ

ミンティアのMEGAHARD、フリスク、刺激系のフェイスシート。少しでも授業中の居眠りを防ぐために、息子が自分で買って入れていたのです。

中学受験の時は、私がカフェインの薬を持たせていました。12歳の体にカフェイン錠剤を飲ませてまで受験させた母親。あの頃の「寝ないための対策」は、全部私が決めていた。

高校生になった息子は、誰にも相談せず自分で対策している。同じ「眠気との戦い」なのに、主語が母から息子に変わっていた。それが嬉しいのか切ないのか、まだうまく言葉にできません。でも、自分で考えて自分で行動できるようになったこと。それだけは確かな成長だと思っています。

みっこの本音——中学1年生から通信講座を使っておけばよかったなぁ

息子が自宅学習を始めたのは中学3年生の4月、高校受験のためでした。でも今振り返ると、中学1年生の不登校が始まった時期から通信講座を使っておくべきだったと思っています。

息子が通っていたのは進学校で、授業の進度が非常に早い学校でした。不登校で授業を受けられない日が続けば、独学で追いつくのはほぼ不可能。かといって塾に行かせようとしても反発ばかり。家庭教師は部屋に入れてもらえず、個別塾も続かない。色々な方法を試しましたが、どれもうまくいきませんでした。

教材なら、中学1年の初歩から自分のペースで復習できる。誰にも見られず、誰にも急かされない。あの環境が、息子には一番合っていたのだと思います。

もし今、お子さんが不登校で勉強が遅れ始めているなら、「高校受験のため」ではなく「今の遅れを少しでも減らすため」に、早めに教材を検討してほしい。遅れが大きくなればなるほど、取り戻すのに時間がかかります。我が家のように2年分の空白を抱えてからでは、本人の負担が大きすぎました。

合格した夜と、そのあとに起きたこと

中受の合格発表の夜、息子は「人生で一番嬉しい日だな」って何度も繰り返していた。あの声を、私は今でも耳の奥で再生できます。

でもその1年後、私はあの家で、ベッドから動けない息子を見ていました。薬を飲ませて合格を勝ち取った夜があって、その1年後には、私が薬を飲んで眠る夜がやってきました。合格した夜に、その1年後まで想像できなかったなぁ。

あの頃の私に戻って声をかけられるなら、こう言いたい。「受かったあとのことも、たまには想像してね」って。12歳の『人生で一番嬉しい日』は、本物。だから嬉しいはそのまま受け取ってあげて。ただ、『合格』をゴールだと思わないでね、ってだけ。


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みっこ
この記事を書いた人

シングルマザーとして、不登校・起立性調節障害・ADHDの息子と歩んできました。中3の4月に始めた通信講座(進研ゼミ)をきっかけに、約1年後に高校合格。同じように悩んでいる親御さんに「あなただけじゃないよ」と伝えたくてこのサイトを作りました。

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