「中学受験に合格すれば、この子の将来は安泰だ」
そう信じて息子に受験を勧めたのは私でした。結果、息子は難関私立中学に合格しました。でもその先に待っていたのは、不登校、退学、そして親子関係の崩壊です。
この記事では、なぜ私が息子に中学受験を勧めたのか、どこで判断を間違えたのかを正直に書きます。受験そのものを否定するつもりはありません。ただ、私と同じ後悔をするお母さんが一人でも減ってほしい——その思いで綴ります。
中学受験を勧めた理由|内申点が取れない地域に住んでいた
私が息子に中学受験を勧めた一番の理由は、地元の公立中学校の内申点が異常に取りにくかったからです。
私が住んでいる地域は市内でも裕福な家庭が多く、教育費を惜しまない家庭ばかり。公立中学校の内申点はオール5を目指す子が当たり前で、小学6年生から英語塾に通い、先生の評価を上げるために授業外活動に積極的に参加する子も珍しくありませんでした。
私が小学生の頃からこの地域は「内申点が取りにくい」と有名で、他の中学でトップレベルの子が転校してくると平均以下になると言われるほどです。
実は私の両親も「中学は伸び伸びと勉強以外のことを楽しませてあげたい」という方針で、兄・私・弟の3人とも中学受験を経験しています。私にとって中学受験は身近な選択肢でした。
だから息子にもこう言ったのです。
「中高一貫校に入れば、中学の間は受験勉強をしなくていいよ。副教科で内申点5を目指す必要もない。今3〜4教科の勉強をするだけで受験できるけど、公立に行ったら毎日副教科も頑張らないといけない。中学のうちに受験した方があとあと楽だよ」
息子はその言葉を信じて、受験を決意しました。
学校選びの失敗|「いい学校」は昔の話だった
息子に勧めた学校は、私の弟が実際に通っていた学校でした。
弟が在籍していた頃は、のんびりした校風で、生徒の個性を大切にする雰囲気の学校。「すごくいい学校があるんだよ」と息子に話すと、息子はその学校に憧れを持つようになりました。
でも——あとで知ったことですが、学校は数年前に方針を大きく転換していました。進学実績を最優先に掲げ、厳しい管理教育の学校に変わっていたのです。1年間で約30人が退学する(実際には退学を促される)学校になっていたことを、私は入学してから知りました。
もっと調べるべきでした。説明会に行っただけで「弟が通っていた学校だから大丈夫」と思い込んでしまった。学校のカラーは数年で大きく変わることがある——これは、私が一番伝えたい教訓のひとつです。
そして、もうひとつ。学校説明会の内容を鵜呑みにしないでほしいのです。
説明会では「多様性を大切にしています」「一人ひとりの個性を尊重します」と、どの学校も耳触りの良い言葉を並べます。でも実態は違うことがある。ついていけない子は辞めるよう促される——そんな現実を説明会で話す学校はありません。
後から聞いた話ですが、個別相談会に参加した友人が、入学者数と卒業生数に大きな差があることに気づいて質問したそうです。すると担当者は少し困った様子で、「うちの学校だけではないんですが、不登校の児童が増えている時代で、結局辞めていくんですよね……」と答えたそうです。
私が伝えたいのは、偏差値や説明会の印象だけでなく、「退学率」を意識して学校を選んでほしいということ。入学者数と卒業生数を比べれば、その学校がどれだけ生徒を最後まで面倒を見ているかが見えてきます。
入学後の現実|「受験が終われば遊べる」は嘘だった
3年間の受験勉強を乗り越えて合格を勝ち取った息子。「もう勉強漬けの日々は終わった、これからは友達といっぱい遊べる」——息子はそう思っていたはずです。私がそう言って受験を勧めたのだから。
ところが入学してみると、学校は鬼のような勉強量を課してきました。息子の通っていた学校では、「受験がない分のびのびできる」どころか、大学受験に向けたカリキュラムが中学1年生からびっしり組まれていました。すべての中高一貫校がそうだとは限りませんが、あくまで私の実感として、近年偏差値をぐんぐん伸ばしていて、進学実績をやたらとアピールしている学校は、昔とは校風を変えて猛勉強型にシフトしている可能性があると感じています。もちろんこれは私個人の推測にすぎませんが、学校選びの際にはその視点も持っておいて損はないと思います。
受験でエネルギーを使い果たしていた息子は、勉強のスイッチが戻らなかった。「ママの言っていた話と全然違う」——その通りでした。私の見通しが甘かったのです。
受験さえ乗り気ればあとは楽になると思っていた息子は、遊ぶことを優先してしまいました。結果、学校からは「問題のある生徒」として扱われるようになっていったのです。
些細なことで呼び出される日々
男の子同士でふざけて、友達の写真を別の友達にLINEで送ったことがありました。中学生の男の子にはよくあることだと思いますが、学校はすぐに動きました。
電話が来たのは平日の夕方。「両親揃って学校に来てください」と言われました。内容は電話では話せないと。離婚していたので普段やりとりのない元夫にも連絡し、会社を抜けてきてもらいました。一体何が起きたのか。事件に巻き込まれたのか。とんでもないことが起きたのだと、2人とも青ざめながら校長室に駆けつけました。
ところが蓋を開けてみると、「プライバシーの侵害」として注意勧告——友達の写真をLINEで送った件でした。もちろん良いことではありません。でも正直、「……これだけのために両親揃って?」と拍子抜けしたのが本音です。さらに保護者から校長先生宛てに3日以内にお詫び文を提出するよう求められました。
仕事で忙しい中、必死で文章を書いたことを覚えています。後から聞くと、細かいことでも厳しく指導が入ることで保護者の間では有名な学校だったそうです。
※これは息子が通っていた学校の話です。私立中学すべてがこうだと言いたいわけではありません。素晴らしい教育をされている私立もたくさんあります。
「辞めろと言うの?最低だね」|息子に言われた言葉
入学後、起立性調節障害が再発して学校に通えない日が増え、成績も落ちていきました。(起立性調節障害から不登校に至った経緯はこちらの記事で詳しく書いています)
別の記事でも書きましたが、息子は担任から厳しい言葉を受け続けていました。「のらりくらりされると迷惑だ」「次に赤点を取れば身を引いてもらう」——そんな日々が続く中、学校側から退学を促されるようになったのです。
私の気持ちも揺れ始めていました。この学校であと2年、高校まで上がれたとしてもあと5年過ごすことが、本当に息子の幸せなのか。毎週のように呼び出される生活にも限界がきていました。
もし中学3年生で退学になれば、高校受験の対策が一切できていない状態。通信制高校か高卒認定しか道がなくなる。それなら中学2年生に上がるタイミングで転校して、2年間かけて高校受験に備えた方が道が広がるのではないか——そう考え始めていました。
ある日、息子に聞きました。「勉強がしんどかったら、公立に行ってもいいんだよ」
息子は激怒しました。
「中学受験しろって言っておいて、次は学校を辞めろって言うの? 最低だね」
何も言い返せませんでした。息子の言う通りでした。受験を勧めたのは私。3年間必死に勉強させたのも私。それなのに、今度は辞めろと言う。息子の怒りは当然だったと思います。
結局、学校が出してきた条件——「課題は全部提出すること」「赤点を1つでも取れば退学」——を守り続ける自信がないと判断し、息子は自分で辞めることを選びました。(退学から公立転校、その後の不登校についてはこちらの記事に書いています)
滑り止めの学校にしておけば……という後悔
受験の時、滑り止めで合格していた別の学校がありました。見学に行った時、先生方がとても親身で手厚い印象の学校でした。
息子が退学することになった時、真っ先に思ったのは「あの学校にしておけば、こんな思いをさせずに済んだのに」ということです。
偏差値が高い学校=いい学校、ではなかった。子どもに合う学校=いい学校だったのです。後からADHD不注意型の特性があるかもしれないと分かった今、なおさらそう思います。管理の厳しい環境より、個性に寄り添ってくれる環境のほうが息子には合っていた。
公立に転校した息子の本音
退学後、地元の公立中学校に転校した息子は、こう言っていました。
「公立は勉強しろって強要されないし、寝ていても怒られない。先生も優しい。ママから聞いていた話と随分違う」
……耳が痛かったです。「公立は内申点が大変」「副教科も頑張らないといけない」と脅すように受験を勧めた私。でも実際には、公立中学校は息子にとって心を休められる場所になりました。
もちろん、公立に転校してすぐは2日で不登校になっています。すべてが順調だったわけではありません。ただ、公立の先生が息子のペースに寄り添ってくれたおかげで、少しずつ学校に行けるようになりました。
中学受験を考えている親御さんに伝えたいこと
中学受験そのものが悪いとは思いません。私の弟はその学校で充実した6年間を過ごしていますし、受験を通じて得る力は確かにあります。
ただ、私と同じ失敗をしないでほしい。だからこそ伝えたいことがあります。
- 学校の「今」を必ず確認してください。昔のイメージや知人の経験だけで判断しない。在校生の保護者に直接話を聞くのが一番です
- 「受験が終われば楽になる」は嘘になることがあります。進学校ほど入学後の勉強量は多い。入学がゴールではなくスタートだと伝えてあげてください
- 偏差値ではなく「子どもに合うか」で選んでください。発達特性やお子さんの性格によって、合う学校は全く違います
- 滑り止めの学校こそ真剣に見てください。万が一の時にその学校で6年間過ごす可能性を考えて、偏差値に関わらず校風を確認してください
- お子さん自身の「なぜ受験するか」を一緒に考えてください。親の期待だけで走ると、入学後にギャップが生まれます
中学受験の失敗から学んだこと|頑張った経験は無駄にならない
中学受験をせずに公立中学校に行っていたら、息子は別の理由で不登校になったかもしれません。正解は今でも分かりません。
でも一つだけ確かなことがあります。
息子は中学3年生の4月から通信講座で勉強を再開し、約1年で高校に合格しました。「本気でやれば自分はできる」と息子が信じられたのは、中学受験の3年間で必死に頑張り、合格を勝ち取った経験があったからです。
私からすれば失敗だった中学受験。でも息子の中には「やればできた」という成功体験がしっかり残っていた。人生に無駄な経験なんてないのだと、今は心から思えます。
「頑張った経験は無駄にはならない」——そう信じて、これからも息子と一緒に前に進んでいこうと思います。


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