中学2年生の通知表を開いたとき、内申点の欄がすべてハイフンだったことがあります。
成績が悪いのではなく、判定そのものができない。つまり、学校に通えていない期間が長すぎて評価の対象にならなかったのです。
この子は学校に存在していないのと同じだ――そう突きつけられた気持ちでした。
高校受験を考えたとき、内申点がなければ選べる学校は限られます。そのとき初めて知ったのが「不登校でも出席扱いにできる制度」の存在でした。
当時の私はこの制度を知らず、活用することはできませんでした。もっと早く知っていれば、息子の内申点を少しでも積み上げられたかもしれない。そんな後悔があるからこそ、同じ状況にいる方にこの制度のことを正確に伝えたいと思っています。
この記事では、不登校の出席扱い制度の7つの条件と、具体的な申請のやり方を親目線でわかりやすく解説します。
不登校の出席扱いとは?文科省が認めた学習支援制度
不登校の出席扱いとは、学校に登校できない児童・生徒が、自宅などでICT教材を使って学習した場合に、一定の条件を満たせば学校の出席として認めてもらえる制度です。
根拠となるのは、文部科学省が平成17年(2005年)に出した通知です。不登校の子どもたちの学習機会を確保し、学校復帰や社会的自立を支援する目的で設けられました。
ただし、この制度には大きな課題があります。教育現場での認知度が非常に低いのです。
平成30年時点で、全国で制度利用者はわずか286名。同時期の不登校児童生徒は16万人超。制度を知らない・学校側が対応できていないケースがほとんどと考えられます。
私自身、息子が不登校だった当時はこの制度の存在すら知りませんでした。知っていれば学校に相談していたのに、と今でも思います。その後悔は、正直まだ消えていないです。
同じように「初めて聞いた」という方も多いのではないでしょうか。次の章で、出席扱いが認められるための7つの条件を詳しく見ていきましょう。
出席扱い認定の7つの条件【文科省通知をわかりやすく解説】
文部科学省の通知では、不登校の子どもが自宅学習で出席扱いとなるために7つの要件が定められています。ここでは、それぞれを親の目線で噛み砕いて説明します。
条件1:保護者と学校が連携・協力していること
最も基本的な条件です。保護者が学校と定期的にコミュニケーションを取り、子どもの学習状況を共有している必要があります。
具体的には、担任の先生との面談や電話連絡、メールでのやり取りなどが該当します。「学校との関係が途切れていない」ことが前提になるわけです。
不登校が長引くと、学校に連絡すること自体がつらくなる時期もあるかもしれません。でも、この制度を利用するためには学校との接点を保ち続けることが大切です。
私の場合——不登校が長引いた時期、学校に電話すること自体が辛くなった日がありました。でもその接点を保ち続けたことが、後になって選択肢を広げてくれたと感じています。
条件2:ICT等を活用した学習活動であること
自宅での学習が、ICT(情報通信技術)を活用したものであることが求められます。具体的には、タブレットやパソコンを使った通信教育、オンライン学習教材などが該当します。
進研ゼミのようなタブレット学習や、すららのようなオンライン教材がこの条件を満たす代表的なものです。ただし、どの教材でも自動的に認められるわけではなく、学校側の判断が必要になります。
条件3:訪問等による対面指導が行われていること
自宅学習だけで完結するのではなく、対面での指導が前提とされています。学校の先生やスクールカウンセラー、適応指導教室の指導員などが定期的に訪問したり、子どもが相談に通ったりする形です。
「対面指導」と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、月に1〜2回程度の訪問や、保健室登校なども含まれる場合があります。学校と相談して無理のない形を探ることが重要です。
私の場合——月に1回、保健室で先生と話す程度でも息子の様子は伝わっていました。「対面指導」は週1で通うという意味じゃなくて、無理なく会える形を探すことだと思います。
条件4:学習の理解度を踏まえた計画的なプログラムであること
子どもの学力や理解度に合わせた計画的な学習プログラムが組まれていることが条件です。
通信教材の多くは、AIが苦手分野を分析して個別に学習内容を調整してくれます。こうした機能は、この条件を満たす上で大きな強みになります。学校に提出する学習計画書にも、教材の特徴として記載できるポイントです。
条件5:校長が学習状況を十分に把握していること
担任だけでなく、校長先生が子どもの学習状況を把握している必要があります。出席扱いの最終判断は校長が行うため、学習の進捗報告が校長まで届いていることが重要です。
保護者としては、担任を通じて校長先生にも状況を共有してもらうよう依頼することがポイントになります。
条件6:学校復帰に向けた取り組みが行われていること
出席扱い制度は、あくまで学校復帰や社会的自立を目指す過程での支援です。「学校に行かなくてもいい」という趣旨ではなく、復帰に向けて少しずつ取り組んでいる姿勢が求められます。
とはいえ、「すぐに教室に戻れ」という意味ではありません。保健室登校や放課後の登校、オンラインでの授業参加なども、復帰に向けた取り組みとして認められます。子どものペースに合わせて、無理なく進めることが大切です。
条件7:最終判断は校長が行うこと
7つの条件をすべて満たしていても、出席扱いにするかどうかの最終判断は校長先生に委ねられています。
これが制度の難しいところです。校長先生の理解度や学校の方針によって、同じ条件でも認められたり認められなかったりする可能性があります。後ほど体験談でも触れますが、学校によって対応に大きな差があるのが現実です。
出席扱いを申請する具体的な手順・やり方【5ステップ】
条件がわかっても、「具体的にどう動けばいいの?」と悩む方が多いと思います。ここでは、出席扱いの申請を進めるための5つのステップをまとめました。
ステップ1:出席扱い制度について情報収集する
まず、文部科学省の通知内容を確認し、制度の概要を理解しましょう。この記事の内容を把握していれば、基本的な知識は十分です。
お住まいの自治体の教育委員会のホームページにも、不登校支援に関する情報が掲載されていることがあります。自治体によって対応が異なるため、地域の情報も合わせて確認しておくと安心です。
ステップ2:使用するICT教材を選ぶ
出席扱いの実績がある教材を選ぶことで、学校への説明がスムーズになります。教材選びの際は、以下のポイントを意識してください。
- 学習の進捗が記録・出力できるか
- 子どもの理解度に合わせた個別学習ができるか
- 出席扱いの実績や対応実績があるか
- 続けられる価格帯か
教材の詳細については、後の章で紹介します。
ステップ3:担任の先生に相談する
教材が決まったら、担任の先生に出席扱い制度を利用したい旨を伝えます。この時、制度の根拠(文科省通知)と、使用する教材の資料を持参すると話が進みやすくなります。
先生がこの制度を知らないケースも珍しくありません。その場合は、「文部科学省の通知に基づいた制度で、自宅でのICT学習を出席扱いにできる仕組みがあると聞きました」と丁寧に説明しましょう。
ここで知っておいてほしいのは、学校側も前例がないと慎重になるということです。一度で話がまとまらなくても焦らず、何度か相談を重ねる気持ちで臨んでください。
私の場合——先生が制度を知らなかったとしても、それは先生のせいじゃないです。利用者がまだ少ない制度だからこそ、親から丁寧に情報を持っていく姿勢が大事だと、後から分かりました。
ステップ4:学習計画を作成し、校長の承認を得る
担任の先生と相談しながら、具体的な学習計画を作成します。盛り込む内容は以下の通りです。
- 使用する教材と学習内容
- 1日の学習時間の目安
- 学習の進捗報告の方法と頻度
- 対面指導の頻度と方法
- 学校復帰に向けた取り組みの内容
計画書ができたら、担任から校長先生に提出してもらい、承認を得ます。
ステップ5:学習を開始し、定期的に報告する
承認が下りたら、計画に沿って学習を開始します。最も大切なのは、継続的に学習状況を学校に報告することです。
教材の学習履歴を印刷したり、週ごとの学習時間をまとめたりして担任に提出しましょう。報告が途切れると、出席扱いが取り消される可能性もあります。
子どもの体調や気持ちに波がある時期は、学習ペースが落ちることもあるでしょう。そんなときも、「今週は体調が悪く学習時間が短くなりました」と正直に報告する方が、信頼関係を保てます。
出席扱いに使えるICT教材の例
出席扱い制度で利用されている代表的なICT教材を紹介します。
すらら
出席扱い制度の申請に特化したサポートがあり、実績も豊富な教材です。不登校の子ども向けに設計された機能が充実しており、学習の進捗レポートも出力しやすくなっています。友人の子どもが利用しており、学校との連携がスムーズだったと聞いています。
詳しくは「すららで出席扱い・内申点対策」の記事で紹介しています。
進研ゼミ(チャレンジタッチ)
我が家で使っていた教材です。タブレット中心の学習で、AIが苦手分野を分析して個別に出題してくれます。月額費用が抑えめなのもシングルマザーにはありがたいポイントでした。
進研ゼミでの出席扱いについては「進研ゼミで不登校の出席扱いは可能?」の記事で詳しく解説しています。
その他のICT教材
スタディサプリやスマイルゼミなど、他にもICT教材は数多くあります。どの教材を選ぶにしても、「学習の記録が残せるか」「出席扱いの申請に使えるか」を事前に確認しておきましょう。
教材選びに迷ったら「不登校におすすめの通信講座」の記事も参考にしてください。
学校に診断書を出した私の体験――学校によってこれほど違う対応
出席扱い制度そのものは利用しませんでしたが、私には学校に「配慮をお願いする」経験があります。息子が起立性調節障害で苦しんでいた頃、診断書を提出したときの話です。
この体験を通じて痛感したのは、学校や校長先生によって対応がまったく違うということ。出席扱い制度を申請する際にも、同じ壁にぶつかる可能性があります。
私立中学校に診断書を出したとき(息子の学校の場合)
息子は小学6年生で起立性調節障害を発症し、中学入学後に再発しました。授業中に寝てしまうことが増え、先生に指摘されるとまた学校に行けなくなるのではないか――その不安から、中学1年生の2学期に小児科で診断書を書いてもらい、学校に提出しました。
先生は「はいはい」といった雰囲気で受け取り、特に配慮の話はありませんでした。
状況がさらに厳しくなった3学期。息子がどうしても登校できなかった重要な日に、私は再び小児科に行き、「心身消耗状態のため通学が困難」という診断書を書いてもらいました。
学校に持参し、封筒から診断書を取り出して先生に渡したところ、サッと一瞬見ただけでこう言われたのです。
「うちはこういうのでひいきすることはないんですよ」
あの時、ダメか…と力が抜けたのを覚えています。
もちろん、これは息子の学校の場合の話です。私立中学校すべてがこうだというわけではありません。ただ、進学実績を重視する学校では、個別の配慮に対して消極的なケースもあるのだと学びました。
公立中学校での対応はまったく違った
中学2年生で公立中学校に転校した後、2学期から少しずつ学校に通い始めた息子。授業中に寝てしまうと聞き、起立性調節障害のことを先生に伝えました。
「診断書は必要ですか?」と聞いたところ、「特にいらないですよ」と返ってきました。
驚きました。前の学校では診断書を出しても冷たくあしらわれたのに、こちらでは「いらない」と。
公立中学校の吉岡先生は、息子に対してこう声をかけてくれました。
学校によってこれほど対応が違うのかと驚きました。面談でも、課題が出せていないことを威圧的に責めるのではなく、「どうして出せないんや?なんか困ってるんか?」と寄り添ってくれたのです。
出席扱い制度の申請でも、校長先生や担任の先生の理解度によって対応は大きく変わります。もし最初の相談でうまくいかなくても、教育委員会に相談したり、スクールカウンセラーを通じてアプローチしたりと、別のルートを試してみる価値はあります。
出席扱い制度の注意点・よくある誤解
最後に、出席扱い制度について誤解されやすいポイントをまとめます。
「出席扱い=成績がつく」ではない
出席扱いになっても、テストを受けていなければ成績評価(内申点)がつかない場合があります。出席日数と成績評価は別の話です。学校によっては、レポートや課題の提出で成績をつけてくれるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
どの教材でも自動的に認められるわけではない
「この教材を使えば出席扱いになる」と教材側がうたっていても、最終的な判断は学校(校長)が行います。教材を購入する前に、学校側に相談して了承を得ておく方が安心です。
制度を知らない先生も多い
先ほども触れた通り、全国での利用者が286名(平成30年時点)という数字が示す通り、制度の認知度はまだまだ低いのが現状です。先生に相談する際は、文科省の通知資料を印刷して持参するなど、保護者側から情報を提供する姿勢が必要です。
私の場合——最初に相談した先生は制度をご存じありませんでした。文科省の通知を印刷して持っていったら、「こんな制度があるんですね。確認してみます」と前向きに受け取ってくださいました。
出席扱いだけでは高校受験の内申点は万全ではない
出席扱いで出席日数は確保できても、定期テストの点数や提出物の評価がなければ内申点は上がりにくいです。出席扱い制度はあくまで出席日数を補うものであり、内申点全体をカバーするものではありません。
高校受験を見据えるなら、出席扱い制度と並行して、学校のテストを受ける方法や提出物の対応についても担任と相談しておくことをおすすめします。
途中でやめると出席扱いが取り消される可能性がある
学習を継続し、定期的に報告することが前提の制度です。途中で学習が止まったり、報告が途絶えたりすると、それまでの出席扱いが見直されることもあります。子どもの体調と相談しながら、無理のないペースで続けることが大切です。
まとめ:知っているだけで選択肢が増える
不登校の出席扱い制度は、知っているかどうかで子どもの進路の選択肢が変わります。
私は息子が不登校だった当時、この制度を知りませんでした。内申点がすべてハイフンの通知表を前に途方に暮れていたあの頃、もしこの制度を知っていたら、もう少し早く動けていたかもしれません。
制度を使うかどうかは別として、「こういう選択肢がある」と知っておくことが、不登校の子どもを持つ親にとって大きな支えになります。
学校との相談がうまくいかないこともあるかもしれません。私のように、診断書を出しても取り合ってもらえない経験をするかもしれません。それでも、別の方法を探し続けることが、子どもの未来につながると信じています。迷ったり、壁にぶつかったりしながらでも、探し続けてほしい。その先に、少しだけ楽になる日がきっとあります。
- 出席扱い制度=ICT教材で自宅学習した場合に、一定条件で学校の出席として認めてもらえる文科省公認の仕組み
- 認知度はまだ低い(全国利用者 平成30年で286名)。親から情報を持ち込む姿勢が大事
- 7つの条件の中で特に重要なのは「ICT教材」「対面指導」「校長の把握」の3つ
- 申請は5ステップ:情報収集→教材選び→担任相談→学習計画書で校長承認→学習開始+定期報告
- 出席扱い≠成績評価。内申点は別途テスト・提出物の対応が必要
- 校長先生の理解度で対応は変わる。最初で諦めず、教育委員会・SC など別ルートも試す価値あり
みっこの本音——知らなかった後悔を、あなたに繰り返してほしくない
この記事を書いたのは、私自身がこの制度を知らなかったからです。
息子の通知表がハイフンだらけだったあの日、出席扱い制度を知っていたら。学校に相談できていたら。内申点を少しでも積み上げられていたら。そう思う日がまだあります。
制度を知っていても、うまくいくとは限りません。校長先生の判断に左右されることもあります。でも、知っているだけで「次に何をすればいいか」が見えてくる。それだけで、夜中に検索バーに向かう時間の質は変わります。
ADHDや発達障害のある子どもの出席扱いについては「ADHD・不登校の出席扱いと通信講座」の記事も参考にしてください。


コメント