参観日、運動会、三者面談……全部は無理だった
シングルマザーでフルタイム勤務。学校行事の全てに参加することは、物理的に不可能でした。
授業参観は平日の昼間。運動会は土曜だけど、仕事が入ることもある。三者面談は平日の夕方。個人面談、保護者会、学習発表会……。
学校からお知らせのプリントが来るたびに、カレンダーとにらめっこ。「この日は仕事が休めるか」「有給はあと何日残っているか」——毎回、綱渡りのようなスケジュール調整でした。
周りを見れば、お父さんとお母さんが揃って参観に来ている家庭。交代で行事に参加できる家庭。そんな光景を見るたびに、「ごめんね」と心の中で息子に謝っていました。
特につらかったのは、学校説明会や体育祭の日。見渡せば夫婦で来ている保護者ばかりで、私は一人ぽつんと立っている。誰かと目が合うわけでもなく、ただその場にいるだけの時間が、じわじわと胸を締め付けました。隣の席が空いているだけで、なぜこんなに孤独を感じるのか——。他の家庭と比べても仕方ないと分かっていても、行事の日だけは自分の状況が鮮明に突きつけられるのです。
私の優先順位の付け方|三者面談>運動会>授業参観
全部に行けないなら、優先順位をつけるしかない。これが私の結論でした。
【最優先】三者面談
三者面談は、子どもの学校生活・成績・進路について直接先生と話せる貴重な機会です。特にシングルマザーの場合、家庭の事情を担任に伝える場としても重要。
不登校やADHDグレーゾーンの問題を抱えていた息子の場合、三者面談は絶対に外せない行事でした。ここで先生との信頼関係を築いておくことが、日常のサポートにも繋がります。
息子が公立中学に転校した時の三者面談は、今でも忘れられません。その先生は「まず学校に来ることへの抵抗感をなくしていきましょう」と言って、週に1回、他の生徒がいない時間帯にプリントを取りに来ることから始めてくれました。
以前の学校では、勉強の遅れやスマホの使い方ばかりを指摘されて、面談のたびに胃が痛くなっていました。でもこの先生は違った。「息子さん、家で一人きりの時間が長いと思います。孤立していませんか」——成績でもルールでもなく、息子の心を真っ先に心配してくれたのです。
「この人なら息子を傷つけない」。そう確信できた瞬間、私の肩の力がすっと抜けました。三者面談は成績を聞くだけの場ではありません。信頼できる先生と出会える場でもある——そう実感した体験でした。
【優先度:高】運動会
運動会は、子どもが「見に来てほしい」と最も強く思う行事です。
自分の走る姿、ダンスする姿を親に見てもらいたい。特に低学年のうちは、この気持ちがとても強い。可能な限り参加するようにしていました。
ただし、土曜出勤がどうしても避けられない日は、「午前中だけ」「お昼の時間だけ」と部分参加に切り替えることもありました。
【優先度:中】授業参観
授業参観は年に数回あるので、全部は行かなくても大丈夫と割り切りました。
年度初めの4月と、学年末の2〜3月の参観を優先。間の参観は、有給が取れる時だけ参加するようにしていました。
全部に行こうとして体を壊すより、行ける時に全力で行く。この切り替えが大切です。
担任への事前連絡のコツ——正直に伝える
学校行事に参加できない時、担任の先生への事前連絡はとても重要です。
私が心がけていたのは、「正直に、簡潔に伝える」こと。
実際に使っていた連絡の仕方
連絡帳や電話で、以下のように伝えていました。
「シングルマザーでフルタイム勤務のため、○月○日の授業参観には参加が難しい状況です。息子の学校での様子で気になることがあれば、別途お時間をいただけると助かります」
ポイントは3つ。
・理由を正直に伝える(嘘や言い訳をしない)
・代替の提案をする(別の機会に話を聞きたいという姿勢)
・子どものことを気にかけていると伝える(放置しているわけではない)
「参加できない=子どもに関心がない」と思われないことが大切です。事前にきちんと連絡しておけば、先生も理解してくれます。
祖父母・信頼できる人への代理出席の頼み方
どうしても行けない行事の時、代理で参加してもらえる人がいると心強いです。
うちの場合は、母(息子の祖母)にお願いすることがありました。ただ、親族がほぼ全員医師で忙しい家庭だったので、毎回頼めるわけではありません。
代理出席を頼む時のコツ
・早めに予定を伝える(「来月の○日、もし空いていたらお願いできますか?」)
・無理強いしない(「難しければ大丈夫です」と逃げ道を作る)
・行事の内容を具体的に伝える(何時から何時まで、何をするのか)
・感謝を忘れない(「本当に助かりました」と毎回きちんと伝える)
・子どもにも事前に伝える(「明日はおばあちゃんが来てくれるよ」)
代理をお願いできる人がいない場合は、ママ友に「ついでに様子を教えてもらう」という方法もあります。動画を撮ってもらうだけでも、子どもの様子が分かって安心できます。
息子が「お母さん来なくていいよ」と言った日
息子が小学5年生の時のことです。
授業参観のお知らせを見ながら、「今回は仕事が休めないかも……」と呟いた私に、息子がこう言いました。
「別にいいよ。お母さん、来なくていいよ」
その言葉は、一見すると「気にしていない」ように聞こえます。でも私には、息子なりの気遣いだと分かりました。母親を困らせたくない、負担をかけたくない——そんな優しさが透けて見えたのです。
同時に、「この子にこんな気遣いをさせてしまっている」という申し訳なさも込み上げてきました。
その日の夜、息子にこう伝えました。
「行けない時はごめんね。でも、お母さんはいつも○○のこと応援してるからね」
息子は「分かってるよ」と笑ってくれました。その笑顔に、どれだけ救われたか分かりません。
体育祭に行かなかったことへの後悔
中学の体育祭の日も、同じことがありました。思春期の息子は「マジで来なくていいから」と本気の顔で言いました。反抗期真っ只中だったし、思春期の男の子が母親に来てほしくない気持ちも分かる。だから、その言葉を真に受けて、体育祭に行きませんでした。
数日後、友人たちから連絡が来ました。
「息子くん、ダンスすごく頑張ってたよ」「応援団やっててめちゃくちゃかっこよかったよ!」
その報告を聞いた瞬間、胸の奥がぎゅっと痛くなりました。応援団をやっていたことすら知らなかった。息子が汗だくで声を張り上げている姿を、私は見ていない。友人たちのスマホの写真で初めて知る息子の姿——。
「来なくていい」は、本心だったのかもしれない。でも、親が行くか行かないかは、子どもの希望とは別の問題だったのです。息子のあの姿を見られるチャンスは、中学3年間でたった3回。そのうちの1回を、私は自分の判断で手放してしまった。
子どもが「来なくていい」と言っても、行ける状況なら行ったほうがいい。後から取り戻せない瞬間が、学校行事にはあるのだと、身をもって学びました。
行事に行けない罪悪感との付き合い方
正直に言います。行事に行けない罪悪感は、何年経っても完全にはなくなりません。
でも、その罪悪感との「付き合い方」は学べます。
私が実践した罪悪感の手放し方
・「行けなかった分」を別の形で埋める:帰宅後に「今日どうだった?」とじっくり話を聞く
・完璧な親をやめる:全部の行事に行けるのが理想だけど、現実は違う。それでいい
・子どもの適応力を信じる:親が思うほど、子どもは気にしていないことも多い
・他のシンママと共感し合う:「分かる、私も」と言ってもらえるだけで楽になる
・行事以外の日常を大切にする:毎日の食事、会話、「おかえり」の声かけ——行事より日常のほうが子どもの記憶に残る
中学受験時は「お弁当」問題もあった
行事とは少し違いますが、中学受験の時期に直面したのが「塾弁(じゅくべん)」問題でした。
息子が通っていた塾は、夕方から夜9時まで。夕食の時間帯をまたぐため、お弁当を持参する必要がありました。
フルタイム勤務のシンママが、朝の学校用弁当に加えて塾弁も作る。これが本当に大変でした。
塾弁を乗り切った工夫
・週末に作り置きして冷凍:おかずを大量に作り、小分けにして冷凍
・コンビニ弁当の日も作る:「毎日手作り」へのこだわりを捨てる
・おにぎり+味噌汁(スープジャー):シンプルだけど温かいものは子どもが喜ぶ
・塾の近くのお店で買う日を設定:週1回は「買い弁の日」と決める
6年の塾代は年間100万円を超えていました。そこにお弁当代、テキスト代、模試代……。シンママの中学受験は、時間的にも経済的にも本当に綱渡りでした。
結果的に難関私立に合格しましたが、その後息子は起立性調節障害で不登校になり退学。今は通信講座で学び直し、高校に合格して自分の道を歩んでいます。
あの時のお弁当作りは無駄だったのか? いいえ、そうは思いません。あの頃の「お母さんが作ってくれたお弁当」は、息子の記憶の中にちゃんと残っているはずだから。
行事に行けなくても、子どもへの愛情は伝わる
学校行事に全て参加できなくても、子どもは分かっています。お母さんが自分のために一生懸命働いてくれていること。毎日ご飯を作ってくれていること。夜、布団をかけてくれていること。
今、息子は高校生になり、一緒に食卓を囲む日常を大切にしています。料理に目覚めた息子が夕食を作ってくれる日もあります。
行事の参加回数よりも、毎日の「おかえり」「おやすみ」の方が、子どもの心には深く刻まれる。
今、行事に行けなくて罪悪感を感じているシンママさん。大丈夫です。あなたの愛情は、ちゃんと届いています。


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